SSDとは、Solid State Drive(ソリッド・ステート・ドライブ)の略のことで、HDDよりも遥かに早い読み書きができる記憶装置のことです。
衝撃による故障リスクが低く壊れにくいため、長年使用できるという特徴があります。
ただ、壊れにくいとはいえ機械は機械。
いずれは寿命を迎えてしまいます。
この記事では、SSDの寿命や、寿命が近づいてきた時の症状、少しでも長くSSDを使用するための方法などについて解説していきます。
【この記事でわかること】
目次
SSDを一般的な形で使用した場合の寿命は、5年程度と言われています。
もちろん、使用頻度や使用環境などによって寿命は変わってきますが、大体の目安として一応覚えておくとよいでしょう。
SSDとHDDには、それぞれメリットとデメリットが存在します。
一概に「処理速度の速いSSDの方が優れている」とは言えないので、メリットとデメリットを考慮しつつ、用途に合わせてSSDを使うのかHDDを使うのかを判断していくべきです。
【SSDのメリット】
【SSDのデメリット】
SSDは、内臓されているメモリーチップを使ってデータの読み書きを行っているため、非常に処理速度が速いです。
従って、ゲームや動画編集といった、一度に大量のメモリを要求される作業をこなすのに向いています。
ただ、HDDと比べると容量が少なく、いざ故障してしまった時のデータ復旧も難しいため、サイズの大きいデータや大事なデータを長期保存する、といった用途には向いていません。
【HDDのメリット】
【HDDのデメリット】
HDDは、回転する円盤型の記憶装置に対して磁気データの読み書きを行うという構造になっており、SSDと比べるとデータの読み書きが遅めです。
そのため、ゲームや動画編集といった大量のメモリを要する作業には不向きです。
また、円盤は常に回転しているため音が大きく、消費電力も多くなってしまいます。
しかし、安価で容量の大きいものが手に入るため、サイズの重い動画や写真を大量に保存する、といった用途には適しています。
SSDが登場して間もない頃は、なんの前兆もなく突然動かなくなるといった事態も珍しくありませんでしたが、現在では性能が上がり、SSDが突然寿命を迎えることは珍しくなりました。
大抵の場合は、「そろそろ限界が近い」ということを示す症状が出ます。
以下にて、SSDの寿命が近づいてきた時に起こりがちな症状を紹介していきます。
SSDは、データの書き込みを繰り返していくことで劣化し、徐々に処理速度が遅くなっていきます。
こういった症状が現れると、SSDの劣化が進んでいるサインです。
処理に耐えられずフリーズしてしまうという症状まで出てくると、寿命を迎えるのも時間の問題なので、早めにデータのバックアップを取っておくべきでしょう。
パソコン使用中に突如電源が落ちる、という症状が出始めた場合も危険です。
フリーズと同じく、SSDが処理に耐えられなくなっている証なので、いつ故障してもいいように準備をしておきましょう。
パソコン起動時に、真っ黒な画面に白文字で「Boot Device Not Found」という文字が表示されることがあります。
これは、SSDやHDDの起動デバイスを認識できていない、ということを表すエラーです。
何度パソコンを立ち上げようとしてもこの症状が出てしまう場合、寿命が近いというよりも、すでに寿命を迎えてしまった可能性が高いです。
ブルースクリーンとは、青い画面に白文字でエラーメッセージが表示された状態のことで、OSに何らかのトラブルが発生したことを表しています。
ブルースクリーンが発生する原因は様々ですが、その原因の一つに「SSDの不調」があります。
本来ならば滅多に発生しないブルースクリーンが頻発するようになってきたら、SSDがそろそろ限界である可能性を疑うべきでしょう。
ブルースクリーンに関してはこちらの記事でも詳しく解説しています。
パソコンのブルースクリーンが頻発する原因は?エラーコードの種類と対処法>>
SSDの寿命は一定ではなく、パソコンの使用方法によって大きく変わってきます。
SSDの寿命に影響を与えるのは、主に以下のような要素です。
SSDの空き容量が少ないと、データを整理するための処理量が無駄に増えてしまい、SSDへの負荷がかかりやすくなってしまいます。
なぜ空き容量が少ないと無駄な処理が増えてしまうのかというと、SSDが持つ「データの上書きができない」という特性のためです。
SSDの場合、パソコンを操作する人がファイルの上書きを行っても、内部的には直接上書きされるのではなく、空いている領域にデータの新規書き込みが行われます。
これを繰り返すといずれ空き容量が減っていくわけですが、その場合には、過去に上書きされたデータや削除されたデータを消去して空き領域を作り、データの書き込みを行うという処理をするようになります。
容量に余裕があれば「新規書き込みを行う」だけで済むところを、容量が乏しいと「一旦不要なデータを消去して空き領域を作ってから、その空いた領域に書き込みを行う」という処理をしなくてはならなくなり、SSDに余計な負荷をかけるようになってしまうのです。
負荷がかかるほどSSDは劣化しやすくなりますので、寿命を縮めてしまう大きな原因となります。
SSDは、製品ごとに「トータルでどれくらいの書き込みが可能か」という総書き込み量があらかじめ決まっています。
決められた総書き込み量に到達してしまうと、それ以上の書き込みができなくなってしまいます。
書き込み可能な総量のことをTBW(Total Byte Written)といい、TBWに達するまでは製品を保証するというメーカーが多いです。
一例として、サムスンのSSDの製品を挙げてみます。
製品名 | 容量 | 保証期間/保証TBW |
---|---|---|
970 PRO | 512GB | 5年または600TB TBW |
参考:サムスンSSD Limited Warranty Japanese
この製品の場合、トータルで600TBの書き込みまでは保証する、ということになります。
なお、製品ごとに決められているTBWに到達してしまうと、それ以上は書き込みができなくなってしまうのでSSDとしての役割を果たせなくなりますが、TBWはかなり余裕を持って設定されているため、よほど変わった使い方をしない限りTBWに到達することはまず考えられません。
しかしTBWに到達しなくとも、書き込みを行えば行うほど劣化が進み処理速度も落ちるので、SSDを快適に使用できる期間を判断する大きな要素であることは間違いないです。
パソコンのような精密機械は、以下のような環境に弱いです。
こうした劣悪な環境で使用し続けることにより、SSDがダメージを受けやすくなってしまいます。
使用時間、すなわちパソコンに電源が入っている時間が長いほど、SSDにも負荷がかかります。
何も作業をしていなくとも、通電中はバックグラウンドで常に動作していることもあり、それだけSSDの劣化も進んでしまうのです。
SSDのスペックも、耐久性に大きく関わってきます。
まず、現行のSSDタイプは以下の4種類となります。
SSDには無数のセルが搭載されていますが、どのタイプのSSDかによって各セルに保存できるデータ量が異なり、1つのセルに保存可能なデータ量が多いほど耐久性が向上します。
なお、上記4タイプをスペック順に並べると「SLC > MLC > TLC > QLC」となり、SLCが最も耐久性に優れていることになります。
【SSDの故障原因や症状とは?】壊れた時の復旧方法についても解説>>
SSDの寿命が残りどれくらいかを推測するのに、以下の3要素が役立ちます。
TBWとは、SSDへの書き込み可能な総データ量のことで、SSDの寿命を予測するための最も重要な要素となります。
TBWの数値が大きいほど耐久性に優れており、長持ちしやすいです。
多くのメーカーが自社製品のTBWを公開しているので、耐久性を把握するためにもパソコン購入時には必ず確認すべきでしょう。
MTBFとは、平均故障間隔のことで、一度修理してから次に故障するまでどれくらい時間がかかるか、についての平均を表す指標です。
どれくらいの期間に渡って正常に使用できるかがわかるので、MTBFの時間が多いほど耐久性に優れているということになります。
MTTFは、SSDを使用し始めてから故障するまでの平均時間のことです。
MTBFとほとんど同じ意味・役割ですが、MTBFが「故障したシステムを修復して使用することが前提」であるのに対し、MTTFは「修復不可能なシステムであり、修復しないことが前提」なので、「MTTF = 製品寿命」と言い換えることもできます。
SSDの寿命予測に役立つ要素については理解できても、具体的にどのように活用すればいいかわからないという方も多いでしょう。
主な診断方法としては、以下の2つになります。
フリーソフトを使用して、SSDの状態を診断することができます。
SSDの寿命を予測するために重要なTBWについても確認できます。
SSDの診断には、以下のようなフリーソフトがおすすめです。
■CrystalDiskInfo
SSDの健康状態などを監視できるソフト。
型番や容量やバッファサイズといった基本情報はもちろん、TBW、電源投入回数、使用時間などの情報も一覧で確認することが可能。
■SSDLife Free
SSDの状態診断や寿命予測、SMART情報の確認などが可能なSSD専用のユーティリティ。
フリーソフトを使っての個人的なSSD診断は、あくまでも簡易的なものです。
本格的な診断を望む場合は、パソコン修理を生業としている専門業者へ依頼するのが確実です。
専用のツール等を使用して、個人では難しいような精度の高い寿命診断をしてくれます。
しかし、診断だけでも費用がかかってしまう場合や、無理やり修理する方向へ持っていき修理費用を取ろうとする業者も存在するため、特別な理由でもない限りはフリーソフトでの自己診断で問題ないでしょう。
使用方法に気を配ることで、SSDの寿命を延ばすことも可能です。
少しでもSSDを長持ちさせるために、できる限り以下の点に気を付けながらパソコンを使用してください。
SSDは、空き容量が少なくなると負荷がかかりやすくなってしまい、寿命を縮めることになります。
空き容量は多ければ多いほどよいので、普段使わないデータや、サイズの大きい動画や画像などはSSDに保存しないようにしましょう。
データの保存に関しては、HDDの方が向いています。
従って、大容量の外付けHDDを購入し、データに関してはできるだけHDDで保存するようにしてください。
また、オンラインストレージを利用してクラウド上にデータをアップロードするという手もあります。
無料で利用できるサービスが多く、自動バックアップ機能が搭載されているサービスも多いため、非常に便利です。
書き込みを繰り返すほど、SSDは少しずつ劣化していきます。
製品ごとにTBW(書き込みの総量)が決まっており、その決められたTBWに近づくほどSSDの寿命にも近づいてしまうため、必要のないファイルコピーなどの無駄な書き込み処理はできるだけ避けるようにして延命を図りましょう。
毎日電源を切ることを面倒くさがり、四六時中パソコンの電源が入りっぱなしの状態になっている、という方は要注意です。
使用していない状態であろうと、通電しているのならばパソコンはバックグラウンドで動いています。
消耗品であるSSDが動いている以上、ほんの少しずつとはいえ地味に劣化が進んでいるのです。
あまり頻繁に電源を入れたり切ったりするのもよくないですが、せめて寝る前には必ず電源を落とすようにすべきです。
スリープ状態でも通電しているので、面倒くさがらずしっかりと電源を切るようにしてください。
精密機械であるSSDにとって、高温や湿気は大敵です。
直射日光の当たる場所や、風呂場などの湿気のもとになるような場所の近くでパソコンを使用するのは控えてください。
その他、パソコンの周辺がほこりまみれというのもNGですので注意が必要です。
ほこりは帯電しやすく、パソコンの故障原因となる静電気をまとったままパソコン内部に侵入してしまうので、パソコン周辺はこまめに掃除するようにしてください。
デフラグとは、簡単に言ってしまうと「パソコン内部を整理整頓すること」です。
以前までは「デフラグによって書き込み回数を消費してしまい、逆に寿命を縮めるのでSSDにデフラグは無意味」という論調が強かったのですが、現在はこういった意見が減ってきています。
SSDへのデフラグ不要論が減ってきた理由は、主に以下の2点。
従って、SSDであろうと適度な回数のデフラグならば行った方がよいと言えるでしょう。
パソコンの使用時間や作業内容によって、どのくらいのペースでデフラグを行うのが「適度」なのかは変わってきますが、概ね1~2週間に一度程度を目安に行うのがおすすめです。
なお、SSDのデフラグを行うソフトとしては以下のフリーソフトが有名です。
SSDの劣化以外にも、SSDが動かなくなってしまうパターンがあります。
SSDに問題がなくとも、パソコンを正常に動作させるためのシステムであるOSに不具合が発生してしまっては、SSD自体が認識されなくなってしまうので動きようがありません。
パソコンが正常に立ち上がらなくなったら、何らかの理由でOSに不具合が発生している可能性を考慮し、まずはセーフモードでパソコンを起動してください。
それからデータのバックアップを行い、OSの再インストールをしてみましょう。
これで動けば、SSDには問題がなかったということになります。
SSDは振動や衝撃に強いですが、当然ながら「何をやっても壊れない」というわけではありません。
限界を超える強い力が加われば、SSDと言えど破損してしまいます。
機械である以上、そうした物理的な破損が発生してしまえばもう使用することはできません。
そもそも、振動や衝撃に強いというのも、あくまでHDDと比較した場合の話。
踏みつけや落下などについては細心の注意を払うようにしましょう。
どんなに気を付けてSSDを使用しても、いつかは寿命を迎えてしまいます。
その時に備えて、日々データをバックアップしておくことは非常に重要です。
データのバックアップには、外付けHDDの他にも「オンランストレージを利用する」という手があります。
オンラインストレージには、
といったメリットがあります。
デメリットとしては、オンラインストレージサービスを提供している会社サーバーに障害が発生するとデータが取り出せなくなることや、データ流出の懸念などがありますが、滅多にあることではないのであまり心配することはないでしょう。
以下に、おすすめのオンラインストレージサービスを5つ紹介します。
Google Driveとは、Googleが提供するオンラインストレージで、GmailやGoogle MeetなどのGoogleが提供するサービスと連携しながら使うことができます。
また、WordやExcelとも互換性があり、クラウド上で直接操作できるのも魅力の一つです。
多機能な上にセキュリティも高いため、オンラインストレージを利用するならばまず候補に挙がるサービスと言えるでしょう。
OneDriveとは、Microsoftが提供するオンラインストレージで、Microsoftアカウントを持っていれば誰でも利用可能となっています。
クラウド上にアップしたファイルは、スマホやタブレットからでも閲覧・編集が可能となっています。
Microsoftが運営しているだけあり、Google Drive同様にセキュリティ面も安心です。
Dropboxとは、ログイン不要で使用できるオンラインストレージです。
ファイル共有のしやすさが特徴で、共同で作業する場合などに向いています。
なお、無料版の容量は2GBと少ないですが、知り合いを紹介するなどの方法で容量を増やすことが可能です。
firestorageとは、日本の会社が運営する、会員登録なしで気軽に利用できるオンラインストレージです。
無料版の場合、利用できる容量が250MBとやや寂しいですが、クラウド上でのちょっとしたファイルの受け渡しには非常に便利です。
boxとは、無料で10GBまで使える、世界最大規模のオンラインストレージです。
セキュリティ面で高い評価を得ているため、日本を含む世界中の企業が有料プランを利用していますが、個人がデータのバックアップのために利用するだけならば無料版でも機能的に充分です。
■box
もしデータのバックアップを取っていない状態でSSDが寿命を迎えてしまった場合は、専門業者に修理を依頼するという手もあります。
ただし、SSDはHDDよりも復旧難易度が高いため、高額な費用が必要となる上、データの復旧が必ず成功するとも限りません。
以上、SSDの寿命が5年程度であることや、寿命を迎えそうな時の症状、長持ちさせるためのコツなどについて解説しました。
SSD搭載のパソコンは高価なので、できるだけ長く使っていきたいものです。
パソコンを使うたびにいちいち、
「無駄なファイルコピーはやめよう…」
「空き容量確保のためにデータを移動させなきゃ…」
「しばらく使わないからちゃんと電源落とさないと…」
と気を配るのは面倒ですが、そうした努力を積み重ねることで、少しでも長く快適にSSDを使用することができるようになりますので、無駄な費用をかけないためにも、面倒くさがらず是非実行してみてください。
監修者/前田 知伸
富士通を経て、リブート㈱代表取締役。パソコンリサイクル業15年目。国内外のIT資格を保有。NHKなど出演実績有り。