「パソコンの動きが重い」
「パソコンが起動しない」
など、古いパソコンを使い続けていると、動きが重くなり頻繁にフリーズを繰り返すなど不具合も多くなります。
不具合が多くなった古いパソコンをリフレッシュできるのが「CPU交換」。
CPUを交換すると、費用をあまりかけずにパソコンのスペックを上げることも可能です。
しかし、本当に自分でCPU交換ができるかと不安になる方も多いかもしれません。
この記事では、CPU交換の事前準備や手順を詳しく解説。CPU交換後の確認方法まで、解説しますので、「パソコンが重くてイライラする」という方はこの記事を参考にCPU交換を試してみてください。
この記事でわかること
CPUが故障する原因や症状とは?CPUを長持ちさせるための方法も解説>>
目次
なかなか簡単にはできないパソコンのCPU交換ですが、CPUを交換することによりパソコンのスペックを上げる効果があります。
パソコンを買い替えるよりも安価でパソコンをリフレッシュできるのがCPU交換です。
ただし、ノートパソコンはCPU交換できない機種もあります。CPU交換の難易度も高いため、確実に成功するとも限らないため注意しましょう。
CPUは性能差が大きいパソコンパーツです。
CPU交換するとパソコンのスペックが上がるため、起動やシャットダウンが各段に速くなります。
CPUが古くなると、最新のWindowsやアプリケーションを使うためにはスペック不足となり、不具合も起こりやすくなります。
しかし、新しいCPUに交換することによりスペック不足を解消し速度が向上するため快適に動作可能。
またこれまでできなかった動画編集、4K動画の鑑賞、3Dゲームなどの高度な作業も、高性能なCPUに交換することで問題なくできるようになることもメリットです。
パソコンが古くなると、ブルースクリーンエラーやフリーズなどの不具合も多くなります。
CPUの故障が原因で不具合が起こっていた場合は、CPU交換により不具合がなくなります。
パソコンのブルースクリーンが頻発する原因は?エラーコードの種類と対処法>>
古いパソコンは多くのタブを開くとパソコンがフリーズしたり、強制終了したりとストレスが溜まりますが、高性能のCPUでは多くのタブを開いたり、多くの作業を同時にこなしたりしても不具合はほとんど起こりません。
パソコンが頻繁にフリーズする原因と対処法!強制終了の方法も解説>>
パソコンは長く使えば使うほど内部にデータが蓄積されます。データがいっぱいになるとパソコンの動作が次第に遅くなりますが、高性能のCPU交換するとこの現象も解消されるでしょう。
また、水没により動かなくなったパソコンもCPU交換で動くようになることもあります。
CPUが古いとWindowsアップデートのたびに動きが遅くなり、なかなかアップデートが終わらない不具合もよくあります。
作業中にアップデートがはじまるとパソコンが急に重くなり、フリーズする場合も。しかし、CPUを交換すればパソコンのスペックが上がるためWindows updateもすぐに終わりトラブルも減ります。
新しいパソコンに買い替えるとすべての不具合は解消し、パソコンのスペックも上がります。しかし、新しいパソコンの購入には費用の負担も大きくなりますね。
CPU交換だけなら、パソコンの買い替えよりも費用の負担は少なく、パソコンのスペックも向上し、買い替えと同じような使い心地が得られるでしょう。
パソコンの買い換えに関してはこちらの記事でも詳しく解説しています。
パソコンの買い替え時はいつ?おすすめの購入時期や買い替え前にやること>>
新しいCPUを購入する前に、現在使用しているCPUやマザーボードを確認します。
パソコンに搭載されたマザーボードの型番により、対応するCPUが異なります。
マザーボードに対応していないCPUは取り付けできないため、事前に確認し対応するCPUを購入しましょう。
また、CPU交換の際にはホコリは厳禁。パソコンのカバーを開けたらパソコン内部も掃除しましょう。
CPUの商品名や型番は、コンピューターのプロパティで確認可能。CPUの商品名や型番がわかったら、メーカーのホームページで対応ソケットを確認しましょう。
CPU交換する場合、対応ソケットが同じCPUを購入する必要があります。
CPUの確認方法
IntelとAMDではソケット形状が大きく異なります。それぞれの確認方法を紹介します。
Intelの場合
IntelのCPUで主流のCPUソケット形状は「LGA1151」で第6〜9世代のCPUを取り付け可能です。
参考:Intel
AMDの場合
2021年12月現在、AMDのRyzenシリーズに対応するソケット形状は「AM4」です。
参考:AMD
マザーボードのメーカーや型番、チップセット、CPUのソケット形状を調べます。
マザーボードの確認は次の方法があります。
交換できるCPUは、マザーボードのCPUソケットとチップセットによって異なります。CPUソケットとは、CPUを置く場所のことで、形状が異なるCPUは使用できません。
パソコン内の目視や、空き箱を確認すると、マザーボードのメーカーや型番が確認可能。
フリーソフト「CPU-Z」では、マザーボードとCPUの型番も調べられます。
マザーボードのメーカーがわかったら、メーカーのサイトでCPUのサポート情報や対応リストを調べましょう。
たとえば、ASUS 日本 マザーボード全シリーズのように各メーカーではマザーボードの製品名から対応するCPUを調べられます。
新しいCPUを購入する際は、必ずマザーボードに合ったCPUを選びましょう。
マザーボードに対応するCPU以外のCPUを使いたい場合は、マザーボードの交換も必要になります。
CPUを交換する前には、BIOSのバージョン確認が必要です。
BIOSはシステムセットアップとも呼ばれ、基本的なデータの書き込みや読み込みを行うソフト。BIOSはマザーボードに搭載されており、パソコンには必須のソフトです。
データの読み書きは、このBIOS(マザーボード)とハードディスク、メモリなど接続機器との間でのやり取りを指し、パソコンを動かす上で重要な部分です。
BIOSは、スマホのようにアップデートが必要。CPUとBIOSのバージョンが合わないとパソコンが正常に動作しません。CPU交換前に、BIOSのアップデートを行いましょう。
パソコンのカバーを開けると大量のホコリがたまっていることが多いでしょう。
パソコン内部にホコリや汚れがあると、故障の原因になります。またCPU交換作業中もホコリは厳禁。
エアスプレーや掃除機などを使い、きれいに取り除いてからCPU交換作業をしましょう。
*1リテール品*2のCPUを購入した場合は不要
*2リテール品とは、パソコンメーカーなどが個人向けに販売する箱入りのCPUで、グリス付きのクーラーが付属しています。正規品、メーカー品と呼ばれることもあります。
事前準備で確認した、マザーボードに対応したCPUを購入しましょう。
CPU交換の最大の目的は性能アップのため、今よりも性能がいいCPUを選びましょう。同世代のCPUであれば、大きい数字のものが高性能です。
CPU交換ではグリスの塗り直しが必要なため、CPU熱伝導グリスも準備します。CPU熱伝導グリスは、CPUを冷却するためのもの。
CPUは高温になるため、グリスは必ず塗らなければいけません。CPU熱伝導グリスを塗り忘れると高温によりパソコンが故障する原因になります。
グリスを指で塗ると不純物が付着し故障の原因になるため、グリスを塗るためのへらなど準備しましょう。
ただしリテール品のCPUを購入した場合は、付属のCPUクーラーにグリスがはじめから付着しているため不要です。
クーラーとCPUが接着する部分にシール状のグリスが付着しており、熱によって溶けてきれいに密着します。
作業時に静電気が心配な場合は、静電気防止手袋を付けて作業しましょう。
CPUは精密機械です。落としたり強く触ったりするだけで、割れる、折れるなどの可能性もあります。すべての作業をできるだけ優しく行いましょう。
まずはパソコンをシャットダウンします。
背面についている電源ケーブル、接続しているキーボードなどのケーブル類もすべて外しましょう。主電源を落としてもパソコン内部に帯電している可能性もあるため、念のため5分ほど待ってから、パソコンのカバーを取り外します。
CPUはCPUクーラーの下にあります。
マザーボードにささっているCPUクーラーの電源ケーブルを抜きましょう。
CPUクーラーの四隅にある留め具に矢印マークがあるのでマークの方向へ90度反時計回りにまわします。CPUクーラーは、マザーボードと電源コネクタで繋がっているので忘れないように抜きCPUクーラーを取り外します。取り外したCPUクーラーにはグリスがついているため、きれいに拭き取りましょう。
CPUクーラーにはたくさんのホコリがついているため、CPU交換前に掃除機や綿棒などできれいに掃除しましょう。
CPUはマザーボードに留め具で留まっているので、留め具をまわします。そっと指でつまむとすぐにCPUが取り出せます。
CPUソケット内にゴミやグリスが入らないように、また落としてCPUソケットのピンを壊さないように注意しましょう。
CPUとソケットは、ソケット形状に間違いなければ必ずピッタリ合います。
新しいCPUにあずき1粒程度のグリスを塗りましょう。
そのグリスを薄く伸ばし、CPUの表面が見えなくなるくらいまんべんなく塗ります。このとき、不純物が付着する可能性もあるため、指ではなくへらなどで塗りましょう。
リテール品でクーラーが付属している場合は、グリスを塗る必要はありません。
もともとのクーラー使用する場合は、ついていたグリスを拭き取りましょう。ティッシュペーパーなどで拭き取るときれいに取れますが、取れない場合は無水エタノールなどをティッシュに含ませると取れやすくなります。
CPUクーラーの足を外側に向けておき、黒いつまみが上に立ち上がっていることを確認してください。
4か所の足をマザーボードに入れ、対角線上に順番に止めていきます。カチッという感触や音がすればOKです。
CPUクーラーの電源ケーブルを忘れないようにマザーボードに接続し、パソコンのケースを閉めましょう。
交換したCPUの廃棄方法に関してはこちらの記事でも解説しています。
CPU交換が終わったら、正常にパソコンが動作することを確認しましょう。正常に動作しない場合は、CPU交換がうまくいっていない可能性もあります。
ここでは、パソコンの確認方法を紹介します。
パソコンの電源を入れるとマザーボードの種類によっては、メッセージが表示されます。
これは、BIOSが新しいCPUを認識したというメッセージのため心配ありません。
そのまましばらく待ちましょう。
「F1」キーを押してBIOSに入り、そのまま「SAVE」して「EXIT」を押します。
パソコンの画面が通常になったらマイコンピューターからプロパティを開き、CPUの情報を確認しましょう。
新しく取り付けたCPUの名前が表示されていたら正しくCPUが交換できています。
CPUの情報は、BIOSのシステム情報でも確認可能。
システム情報確認手順
参考:Intel サポート
CPUクーラーの取り付けは間違えやすいので、正しく取り付けできていることを必ず確認します。
間違えて装着するとCPUの温度が上がり、パソコンが故障する原因になります。
CPUの温度は「パフォーマンスモニター」で確認可能。
パフォーマンスモニターはWindowsの機能のため、ソフトなどをインストールする必要なく使用できます。
パフォーマンスモニターの確認方法
これで、パフォーマンスモニターに「Temperature」(温度)がグラフで表示されるようになります。
ケルビン表示のため、通常使う摂氏温度を確認するときは「273」を引きましょう。
CPUの適性温度は40~70度。70度以上の場合は、CPUクーラーがうまく取り付けできていない可能性があります。
自分ではCPU交換ができないと思ったら、修理業者などに交換を依頼する方法もあります。
業者によって、CPU交換にかかる費用は異なりますが、工賃が4000〜8000円程度、+部品(CPU)代というのが相場です。
CPU交換の費用例
会社例 | 費用 |
---|---|
A社 | 5,000円+部品代 |
B社 | 4,400円+部品代 |
C社 | 6,000円+部品代 |
D社 | 7,600円+部品代 |
料金には保証やサポートなども含まれ、交換後の初期設定済みですぐにパソコンが使えるというメリットもあります。
一体型パソコンやノートパソコンなど、工程が多くなる場合は割り増し料金になることも。
業者に修理を依頼する場合は、パソコンの種類やCPUの種類などを事前に調べておくとスムーズです。
パソコンメーカーでもCPU交換が可能です。
パソコンメーカーの修理費用例
メーカー | 費用 |
---|---|
富士通:概算修理料金表 | 別途お見積り |
NEC:修理料金表 | 62,480~65,780円 |
hp:概算修理料金表 | 40,000~200,000円 |
Dell日本:PCの修理 | サポートセンターに連絡後見積り |
Lenovo:引き取り修理サービス料金 | 55,330~77,330円 |
dynabook:修理概算料金 | 90,500円~ |
メーカー修理には、部品(CPU)代も含まれています。ノートパソコンは修理対応外のこともあるため、まずはメーカーサポートに電話して相談しましょう。
CPU交換後にパソコンが起動しない場合は、単純ミスの可能性もあります。焦らず次の方法を試してみましょう。
意外と多いのが、単純なミスです。
ディスプレイの電源が入っているか確認しましょう。また、ディスプレイの電源コードがコンセントに差さっているかも確認してください。
HDMIケーブルや他のケーブルの差し込みがゆるんでいる場合もあります。まずは、このような接続機器類をしっかり確認しましょう。
またメモリがしっかりと接続されていない場合も起動しない原因になります。
CPUクーラーがうまく接続できていない場合は、CPUの冷却がうまくいかず温度が上昇し熱暴走を起こす場合があります。
またグリスを塗り忘れた場合も、同様です。
熱暴走を起こしたパソコンは、不具合が起こり起動しないこともあります。CPUクーラーの接続やグリスの塗り忘れがないかを確認しましょう。
クーラーやパソコン内部にホコリが溜まっている場合も熱暴走を起こすことがあるため、掃除するのも効果的です。
マザーボードとCPUの相性を間違えるとパソコンが起動しません。
マザーボードのメーカーを確認し、対応するCPUに間違いないがないかを確認しましょう。購入するCPUを間違えていた場合は、CPUを購入しなおす、またはマザーボードの交換が必要です。
CPU交換前に、BIOSのバージョンを確認し、必要ならBIOSをバージョンアップします。
BIOSのバージョンアップをしないまま、CPUを交換するとパソコンが起動しません。
この場合は、交換前のCPUに一度戻し、BIOSのバージョンアップをしてから再度新しいCPUを付け直します。
CPU交換は、パソコンのスペックが上がり快適になりますが注意点もあります。
次のことに注意して、CPU交換を行いましょう。
CPU交換など分解と伴う作業を自分で行うと、「パソコンの改造行為」にあたりメーカー保証の対象外になります。
万が一の場合の保証を受けたい場合は、メーカー保証が残っている期間はCPU交換を避けましょう。
またCPU交換は繊細な作業です。パソコンが故障する可能性もあるため、自己責任で行いましょう。
参考:富士通 無料修理規定
CPU交換作業は慌てないで、優しく進めましょう。
CPUのソケットは非常に衝撃に弱く、ソケット部分に物を落とすなどで曲がるとCPUが認識されなくなります。
パソコン内部は細かく表示が見えにくい場合もあります。ルーペを利用する、スマホで写真を撮り拡大するなどして情報を確認しながら慎重に進めてください。
周囲のパーツには極力触れないようにしましょう。パソコンは繊細な機器のため、メモリなどは少しの静電気で使い物にならなくなる場合も。
また、水分やホコリは厳禁のため、作業環境はきれいに保ち飲み物などの水分はそばに置かないようにしましょう。
IntelからAMDは両者に互換性はなく、たとえば、corei5→Ryzen7の交換はできません。CPUのソケット形状はCPUごとに異なり、パソコンに搭載しているマザーボードに対応しているCPUしか取り付けできません。
どうしてもIntelからAMDのCPUに交換したい場合、CPUだけではなくマザーボードごと交換する必要があります。
新しいCPUには熱伝導グリスを必ず塗り替えてください。古いクーラーを取り外した際にこびりついたグリスは必ず拭き取り、新しいグリスを塗り直しましょう。
ただしリテール品のCPUを購入した場合は、付属のCPUクーラーにグリスが付着しているため、グリスの塗り直しは不要です。
監修者/前田 知伸
富士通を経て、リブート㈱代表取締役。パソコンリサイクル業15年目。国内外のIT資格を保有。NHKなど出演実績有り。