マザーボードは、多くのパーツが接続されたパソコンの土台のようなもので、寿命が来るとパソコンは正常に動作しません。
しかしパソコンの不具合は、複数のパーツの故障が原因となり、マザーボードの寿命を見極めるのは難しいことです。
そこでこの記事では、マザーボードの寿命の年数や症状、診断方法などを解説します。寿命を迎えた際の交換方法も解説しますので、参考にしてください。
この記事でわかること
目次
マザーボードは、どんなパソコンにも必ず搭載されている大きな基盤のことで、メインボードやシステムボードとも言います。
マザーボードには電源やCPU、メモリー、その他周辺機器などが接続されており、パソコンの土台となる部品です。
その役割は、各部品に電源を供給したり、部品同士の情報の伝達を手助けし、各部品を管理することです。
寿命が来ると接続しているCPUやメモリー、マウス、キーボードなどの周辺機器は機能できなくなります。
3~5年程度と言われています。
寿命が来るとパソコンが急に起動できなくなり、データの復元が簡単にはできなくなる可能性もあります。寿命を迎える前に対処できるように、寿命の時期や原因を知っておくことも大切です。
マザーボードの寿命に関係が深い部品が電解コンデンサです。
電解コンデンサは、マザーボードに付属している部品で、パソコンが安定して動作するための蓄電池の役割をします。電源出力のわずかな乱れを調整し、ノイズの発生を抑えます。
寿命が来るとコンデンサが膨らみ、一見してわかるようになります。そのまま放置して使用し続けるとコンデンサの中の電解液が洩れ、異臭や発煙の原因となります。
電解コンデンサの寿命は、温度を65℃として32,000時間でパソコンを24時間稼働させた場合3. 5年です。電解コンデンサの寿命はマザーボードの寿命と同じと言われるほど重要な部品です。
マザーボードの中には、ボタン電池が入っています。
電池ですから、もちろん寿命があり電池切れすると不具合が起こります。電池の寿命は使い方にもよりますが、約3年程度です。
マザーボードの電池は、BIOSの電源として使用されます。BIOSは、パソコンに接続された周辺機器を制御するためのソフトで、電源によって記録されている情報を保持しています。
電池が切れるとBIOSへの電源供給ができなくなり、保持された情報が失われます。そのため、起動しない、フリーズするなどの症状が起こります。
マザーボードの寿命は、パソコンの使用環境や使用時間によって変動します。
電解コンデンサの寿命は、約32,000時間。毎日24時間、ハードにパソコンを使用する人は3. 5年で寿命を迎えます。
しかし、その半分の12時間毎日パソコンを使う人なら7年間、毎日6時間パソコンを使う人は15年で寿命を迎える計算になります。使用環境によって異なるため、定期的に状態をチェックしましょう。
パソコンの寿命に関しては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
パソコンの平均寿命を解説!寿命がきたときの症状と長持ちのコツ>>
マザーボードが寿命を迎えると、パソコンに不調が起こります。ここでは、寿命を迎えた場合に起こりやすい症状を紹介します。
ただし、パソコンの不調は1つのパーツだけに起因するものではありません。マザーボード以外の故障でも、下記の不具合が起こることもあります。たとえば、パソコンのフリーズはハードディスクやウイルスが原因となっている可能性も。
他の原因に心当たりがない場合は、マザーボードを調べてみましょう。
最も多い症状はパソコンの電源が入らなくなることです。電源スイッチを押しても電源が入らない場合は、マザーボードの寿命かもしれません。
また電源ランプが点灯しても起動しない、一瞬だけランプがついて電源が切れるなどもよくある症状です。
これらの症状はある日突然起こることもありますが、徐々に症状が悪化することもあります。最終的には何も反応しなくなるので、症状が現れたら早めに対処しましょう。
電源が入らない場合は、電源ユニットの故障も考えられるので同時に調べてみましょう。
パソコンの電源が入らないことに関しては、こちらでも詳しく紹介しています。
パソコンの電源がつかない原因は?ランプはつくなど症状別の対処法を紹介>>
パソコンが頻繁にフリーズする場合は、マザーボードの寿命かもしれません。
ただし、パソコンのフリーズは、特有の症状ではありません。ハードディスクの故障やウイルスなどの原因もあるため、ハードディスクの確認やウイルスチェックも行いましょう。
パソコンのフリーズに関しては、こちらのの記事でも詳しく紹介しています。
パソコンが頻繁にフリーズする原因と対処法!強制終了の方法も解説>>
電解コンデンサが故障すると、突然電源が落ちることがあります。
CPUの温度上昇で電源が落ちる場合は、パソコンに負荷がかかると電源が落ちるなどのある程度の法則がありますが、マザーボードの寿命が原因の場合、予期せず突然電源が落ちることが多くなります。
電源が落ちる不具合は、CPUの温度上昇や電源ユニットの故障、電力の共有不足などの原因も考えられます。それぞれ確認しましょう。
ビープ音とは、パソコンから鳴る「ピー、ピー」という機械音。たとえば、dell製のノートパソコンでは、ビープ音が1回鳴るとマザーボードやBIOSの故障の可能性があります。
ビープ音はマザーボードが不具合を感知して鳴らすものなので、逆にビープ音が一切ならない場合もマザーボードの寿命の可能性が。
ただしビープ音は、他の部品の故障でも鳴ります。ビープ音の鳴り方をよく聞いて、故障の原因を見つけましょう。
基盤周辺にホコリが溜まる、水分を含むなどでショートして、周辺パーツが焼き付き焦げ臭いにおいが発生します。
また、電解コンデンサが破裂や液漏れした場合、電源の安定化ができなくなり発火することもあります。電解コンデンサの液漏れでは、酸っぱい異臭が、破裂した場合は破裂音や焦げ臭いにおいがします。
焦げ臭いにおいは、マザーボード周辺が異常に高温になっている証拠です。メモリやCPU、CPUクーラーなどが故障して発熱している可能性もあるため、パソコン内をよく確認しましょう。
電解コンデンサは電源を蓄電して出力をコントロールしています。電源の出力のわずかな乱れをコントロールして、画面の乱れを抑えます。
ディスプレイが映らないのは、配線の不備や、モニター、グラフィックボードの故障が原因のことも多いのですが、マザーボードの寿命が原因のこともあります。
マザーボードにはパソコンの起動を制御するBIOSが搭載されています。寿命を迎えると、BIOSが正常に動作しないため画面の表示ができなくなります。
電源を入れた後に画面が乱れる、画面が乱れた後に電源が切れるなどの症状がある場合は、マザーボードの寿命を疑いましょう。
パソコンの時計はBIOSによって制御されています。電池の寿命によってBIOSへの電力が絶たれた場合、時間や年月日が初期設定にリセットされます。
パソコンを再起動しても時計のズレが改善しない場合は、電源を切りしばらく放置してから再び電源をつけましょう。時計の設定を手動で直しても、直らない場合はマザーボードの電池切れの可能性が高いでしょう。
パソコンの不具合の原因は1つではありません。原因を特定するためには、それぞれのパーツを確認する必要があります。
ここでは、マザーボードの寿命を診断する方法を紹介します。
パソコンの不具合の原因を特定するには、パソコンを最小構成で起動することが有効です。
最小構成は、マザーボード、メモリ、CPUで、パソコンを起動させるために最低限必要な構成です。
マザーボードが故障していれば、パソコンは起動しません。最小構成で起動した場合は、最小構成以外のパーツの故障が原因の可能性が高いでしょう。
最小構成でエラーが出たら、マザーボードの寿命を疑いましょう。
寿命を診断するためには、パソコンの蓋を開けてマザーボードを目視して、電解コンデンサの状態を確認します。
電解コンデンサが、変色する、膨らむ、破裂して液漏れするなどの異常があればマザーボードの寿命です。コンデンサの電解液が液漏れしていると、マザーボードが腐食していることもあります。
マザーボードの電池は、「BIOS」や「UEFI」の情報を保つために大切なパーツ。電池からの電源供給によって、パソコンの電源を切ってもBIOSなどに設定された情報が保持できます。
BIOSやUEFIは、起動直後に立ち上がりOSを読み込みます。そのため、電池が寿命を迎えると、OSが起動しないなどの不具合が発生します。
電池が寿命を迎えても、交換することによって不具合を改善可能。
電池寿命が来たときの交換方法を紹介します。
マザーボードの電池は、自分で交換可能です。
しかし、パソコンを解体してマザーボードの電池を探す必要があるため、故障のリスクもあります。電池交換に自信がない場合は、業者に依頼するのも1つです。
電池交換に必要なものは次の4点。
交換する電池は、パソコンを開けて電池の型番を確認してから購入しましょう。多くの場合はボタン電池ですが、間違った電池を取り付けると故障の原因になります。
電池交換の手順
パソコンは精密機械のため、慎重に扱う必要があります。電池交換の際には他のパーツに触れないように細心の注意を払いましょう。
その他、注意することを紹介します。
電源が入ったまま作業すると、感電やマザーボードの破損のリスクがあります。
念のため、接続している周辺機器も取り外してから作業しましょう。
マザーボードは静電気に弱く、少しの静電気でも悪影響を与えることもあります。メモリなどは少しの静電気で使いものにならなくなることも。
静電気防止手袋を使う、事前に金属に触れて静電気を逃してから作業するなど、静電気対策をしましょう。
電池交換の際にマザーボードを傷つけると、電源が入らないなど不具合が起こる可能性があるため慎重に扱いましょう。
電池交換の際には、電池の向きや型番などをしっかり確認しましょう。異なる種類の電池を取り付けようとして無理に押し込むと破損する可能性もあります。
CMOSには、BIOSやUEFIの情報が保存されています。CMOSクリアを実行すると、BIOSの設定情報が初期化され、OSが起動しない、フリーズするなどの問題も解決できます。
CMOSクリアを実行するには、マザーボードの電池を外して15分程度放置するだけです。機種によっては1時間程度放置が必要な場合があるため、1時間放置すれば安心です。
CMOSクリアを実行するとパソコンによっては、BIOSの再設定が必要な場合があります。BIOSの初期設定の詳細が必要になるため、CMOSクリア前にメモしておきましょう。
CMOSクリアで、BIOSやUEFIを初期化するとパソコンがうまく作動しないリスクもあるため、慎重に行いましょう。
マザーボードの寿命には幅があり、パソコンを使用する環境に左右されます。
マザーボードの寿命を延ばすための方法を紹介します。
急激な温度差や湿度は、パソコンの大敵です。
直射日光が当たる窓際などにパソコンを放置すると、パソコン内の温度が上昇します。とくに電解コンデンサは温度が10℃上がると寿命が半分になるとも言われています。反対に、温度が10℃下がると寿命は2倍に。
また湿度が高い場所も要注意。急激な温度差がある場所も、パソコン内に結露が発生するため注意が必要です。パソコンは水分に弱く湿気や結露によって、マザーボードが腐食する原因にもなります。
室内環境を整え、高温・多湿の場所でのパソコンの使用を避けることで、マザーボードの寿命が延びます。
パソコン内にホコリが溜まると、パソコン内に熱がこもり熱暴走を起こす原因になります。ホコリが原因でマザーボードがショートする危険もあります。
パソコンの故障の原因の多くはホコリが関係しています。とくにホコリが溜まりやすいのは、電源やファンの周りです。エアダスターなどでホコリをきれいに掃除しましょう。
パソコン内部だけでなく、ファンの換気口なども定期的に掃除してパソコンの冷却効果を保ちましょう。
パソコンは精密機械のため、衝撃にはとても敏感です。
パソコンを落とす、壁にぶつけるなどの衝撃を与えると、マザーボードが破損、接続しているパーツが外れることがあります。
また雷が落ちたり、水をこぼしたりなどでマザーボードがショートし焼け焦げることもあります。ノートパソコンを持って移動する際には、保護ケースに入れるなど衝撃を与えないように工夫しましょう。
パソコンのメンテナンスをする頻度を決めておいて、定期的にメンテナンスすることも大切です。
メンテナンスの方法
上記のメンテナンスを定期的に行うことで、マザーボードだけでなく、パソコン全体の寿命を延ばすことが可能です。
電解コンデンサの質が良いとマザーボードは長持ちします。
電解コンデンサには耐久温度があり、高いものの方が高品質。たとえば、耐久温度が85℃の電解コンデンサよりも105℃のものの方が高品質で耐久性も高くなります。
電解コンデンサの質は、マザーボードの寿命に直結します。マザーボードの寿命をできるだけ延ばしたいなら、電解コンデンサの質に注目してマザーボードを選びましょう。
自分でマザーボードを交換する場合にかかる費用は、マザーボードの購入費用だけです。マザーボードの費用はスペックによって差があり、数千円で購入できるものから5万円程度のものもあります。
しかし、マザーボードの交換はパソコンを解体する必要があり、初心者の方には難しい場合も。
マザーボード交換は、パソコンメーカーやパソコン修理業者で交換できます。
そこでパソコン修理業者でマザーボードを交換した場合の費用の相場を紹介します。
パソコンメーカーの例
パソコンメーカー | 修理費用 |
---|---|
富士通 | 51,700円~57,420円 |
NEC | 58,960円~62,260円 |
dynabook | 47,700円~ |
参考:富士通 概算修理料金表
パソコン修理業者の例
パソコン修理業者 | 修理費用 |
---|---|
A社 | 12,100円 |
B社 | 11,000円 |
C社 | 6,600円~ |
パソコンメーカーは、作業費+パーツ代の合計です。パソコン修理業者は、作業費のみでパーツ代が別途必要です。
パソコンメーカーでマザーボード交換する場合の費用の相場は、4万円から6万円程度。パソコン修理業者では、6,000円から1万円程度とマザーボードの費用がかかります。
マザーボードは自分で交換も可能です。ここからは、マザーボードの交換手順や事前準備について紹介します。
交換作業をはじめる前に、必ずしておくことがマイクロソフトアカウントとWindows10を紐づけることです。
Windows10以前のパソコンでは、OSなどのハードディスクの中身をそのままの状態でマザーボードなどのハードウェアを変更すると、起動できなくなる場合がありました。
しかし、Windows10では紐づけすることによって、マザーボード交換後も以前と同じように使用できます。マイクロソフトアカウントは無料で発行可能、持っていない場合は発行しましょう。
下記の手順でアカウントを紐づけましょう。
参考:Microsoftサポート ハードウェア構成の変更後に Windows のライセンス認証をもう一度行う
シリコングリスはCPUクーラーとCPUの接地面に塗り、放熱の手助けをするものです。塗り替えするとCPUが長持ちします。
他にも、ピンセットや小皿があれば、落ちたネジを拾う、外したネジを入れるために便利です。
マザーボードを交換する手順は次の通りです。
マザーボードは繊細な機器のため、慎重に作業しましょう。
パソコンが起動したら、一度パソコンの電源を切り再び電源を入れ「F2」もしくは「DEL」キーを押し「BIOS」を呼び出しそのまま終了します。
BIOSが起動すれば、マザーボードの交換は無事完了です。交換後はWindowsを再認証しましょう。
Windows10の再認証の方法
以上で、Windows10の再認証完了です。
パソコンは精密機械。マザーボードの交換は慎重に作業する必要があります。マザーボードを交換する際の注意点を紹介します。
感電を防ぐために、パソコンの電源を切りコンセントも抜きましょう。電源を切ったら、パソコンのランプがすべて消えていることを確認してください。ランプがついている間は、ハードディスクなどが動作している可能性があります。
すべてのランプが消えていることを確認してから作業しましょう。マザーボードの電解コンデンサには大量の電気が蓄電されているため、できるだけ作業の2時間以上前に電源を切ると安心です。
マザーボードには細かいパーツが多く付属しています。落とさないために十分注意が必要ですが、洋服をひっかけただけでも破損する可能性もあります。
少し触っただけでコンデンサが取れてしまうこともあるため、マザーボードの取り扱いは慎重に行いましょう。
マザーボードを交換する際には、必ず直前に静電気を逃しましょう。体や衣服などに溜まった静電気がパソコンの電子部品を故障させてしまいます。
静電気を逃す方法は、ドアノブなどの鉄製品を触る、水道水で手を洗う、帯電しやすい衣服を脱ぐなどがあります。
マザーボードを交換する前には、システムドライブのバックアップを取りましょう。マザーボードを交換するとドライバを入れ直す必要があり、システムに変更が加わります。
交換作業が失敗して元に戻すことも考慮しバックアップを必ず取っておきましょう。
システムドライブのバックアップデータがあれば、簡単に元の環境に戻せるため、安心して作業できます。
マザーボードの寿命が来たら、マザーボードを交換する、修理する、パソコンを買い替えるなどの対処方法があります。
パソコンの状態やかかる費用などを考慮して最善の方法を選びましょう。
マザーボードに寿命が来ても他のパーツが問題ない場合は、マザーボードを交換することで症状が改善する可能性があります。
しかし、マザーボードが寿命の場合は、他のパーツにも不具合がある可能性もあり、マザーボードだけの故障であるかを見極める必要があります。
不要になったマザーボードは処分しましょう。
自分でマザーボードの交換ができない場合は、パソコン修理業者やメーカーに修理も依頼する方法もあります。
パソコン修理業者やメーカーでは、パソコン全体の不具合を診断してくれることもあるため、マザーボードだけが原因と特定できない場合も有効です。
ただし、数万円程度の費用がかかることがデメリットです。
マザーボードの寿命を迎えたパソコンは電源が入らないことも多く、下取りできないケースもあります。
修理に出すと高額な費用がかかることから、パソコンの買い替えを検討するのもいいでしょう。
パソコンの買い替え時はいつ?おすすめの購入時期や買い替え前にやること>>
監修者/前田 知伸
富士通を経て、リブート㈱代表取締役。パソコンリサイクル業15年目。国内外のIT資格を保有。NHKなど出演実績有り。