いつもは聞こえない音がパソコンから聞こえてくると、不安になるものです。中でも、HDDは通常でも「シーク音」などの音がするパーツですが、カチカチなど大きな異音がする場合は故障が考えられます。
この記事では、HDDから異音がした場合の音の種類から原因や対処法、注意点を解説します。HDDから聞える音から判断できる内容なので、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
目次
HDDの仕組みを知ることによって、異音が出ている場所や原因を知ることができます。
HDDは、レコードのようなプラッタと呼ばれる円盤型の装置にデータを記録します。HDDの中では複数枚のプラッタが高速回転しており、それぞれの表面でデータを読み書きするための磁気ヘッドが動いています。磁気ヘッドはわずかにプラッタから浮いており、経年劣化などでプラッタに接触するようになると異音がすることがあります。
HDDはモーターを回転させてプラッタにデータを読み書きするため、経年劣化や衝撃、転倒などによって故障しやすいパーツです。磁気ヘッドと磁気ディスクのすき間は数ナノメートルほど。ナノメートルは髪の毛の1/40,000程度の大きさです。そのため、ほんの小さなホコリやチリによって、HDDが障害を起こし異音が発生する事があるのです。
HDDはその仕組みから、通常「ブーン」といった回転音や、「カタカタ」といったシーク音が発生します。大きな異音は故障の可能性が大きいのですが、反対に無音の場合も、HDDが動作しておらず、故障している可能性があります。
HDDから異音がする場合、HDDから聞こえる音がどのような音なのかを聞く必要があります。聞こえてくる音は、異音の場合と正常な音の場合があるため、良く聞いてみましょう。
HDDからの異音は、「物理的音」と機械的な音である「ビープ音」の2種類です。ここでは、さらに詳しくHDDから聞こえる音の種類や原因を解説します。
「ジージー」「カリカリ」と音がするのは、正常です。「シーク音」と呼ばれ、HDDがデータを読み書きしている場合に発生します。シーク音がしている場合には、電源を切ったり、振動を与えたりしてはいけません。HDDに物理障害が発生し、故障やデータ破損の原因になります。
シーク音が気になる場合は静音のHDDを選んだり、ケースに入れたりすることで音を抑えられます。
「ブーン」と音がする場合は、HDDからの音ではなくパソコンの冷却ファンによる回転音です。音が大きすぎる場合は、ファンにほこりが溜まっている可能性があります。
ファンにほこりが貯まり排熱機能が低下すると、パソコンに熱が蓄積し熱暴走を起こす可能性があります。早めにファンの掃除をしましょう。
また、HDDのモーターの回転音がHDDと共振することによって、音が大きくなっているケースもあります。床や家具など硬い場所に直接パソコンやHDDを置いている場合に起こることが多く、故障ではありません。柔らかいシート等を挟むと音が抑えられる可能性があります。
「ガリガリ」、「カタカタ」と音がする場合は、磁気ヘッドや磁気ディスクに異常が起こっている可能性が考えられます。HDDの劣化や衝撃が加わったことにより、磁気ヘッドとディスクが接触している、磁気ヘッドの駆動部分やモーター部分などの異常の可能性があります。HDDが使用できる場合でも、使用をやめて修理などの対処をしましょう。
金属同士が接触するような異音がする場合は、HDDのデータを読み書きするパーツが故障し、物理障害が発生している可能性があります。磁気ヘッドが破損して、アームやプラッタなどのパーツに接触しているケースが考えられ、使用し続けることで症状が悪化する可能性があります。
HDDから「シー」などとこすれるような音がする場合は、何らかの原因によりHDD内部でパーツが接触し、円盤状のパーツ(プラッタ)に異常が生じている可能性があります。使い続けると、プラッタの傷が深くなり、データを消失することがあります。こすれるような音がしたら、使用を中止して通電もしないようにしましょう。
HDDから聞こえる異音の中でも、「ピー」などの電子音が聞こえる場合は、磁気ヘッドとプラッタが接触したままなど、正常の位置とは異なる場所で磁気ヘッドが停止していることが考えられます。
これらの電子音は非常に小さい音のため、よく耳をすまさなければ聞き逃してしまいますが、聞こえた場合は、使用をやめて電源を切りましょう。HDDの異常を示す電子音のため、使用を続けるとHDDが完全に故障しデータの取り出しが難しくなる可能性があります。
「ガチャガチャ」、「ゴットンゴットン」など激しい異音がする場合は、HDDが完全に故障する寸前の可能性があります。あまりにも激しい異音がする場合は、すぐにHDDの使用を中止しましょう。データのバックアップが取れる場合は取りますが、無理に保存すると完全に故障し、データの取り出しが難しくなる場合もあります。
HDDが動作していれば、通常はシーク音と呼ばれる動作音がします。全くの無音の場合は、正常に動作していないこともあります。HDDの動作音は非常に小さい音のため、よく耳をすまして聞いてみてください。
全く音がしない場合は、HDDのモーター部分が破損し、回転していないことが考えられます。HDDのモーターは高速回転し、一定の速度以上になると動作音が発生します。モーターが損傷すると、回転数が足りなくなったり、不安定になったりして、動作音も聞こえなくなります。
動作音が聞こえない場合は、モーターだけでなく基板や電力供給部分に不具合が出ている可能性もあります。正常に動作しないままHDDに通電を続けると、症状が悪化することもあるため、使用を中止するのがおすすめです。
HDDから異音がする原因は、さまざまです。HDDはそもそも、それほど大きな音が発生する装置ではありません。そのため異音の種類にかかわらず、通常とは違う音がする場合はHDDの異常を疑いましょう。
HDDから異音がする原因は、以下があります。
HDDの異音の原因は、大きく落下や転倒などの物理ダメージと、経年劣化による部品の消耗が考えられます。それぞれ、異音の原因を解説します。
HDDを使用していると、シーク音と呼ばれるデータの読み書き音が発生します。シーク音は、「ジージー」「カリカリ」と音がしますが、正常な動作音のため問題ありません。
HDDを落とすなどの衝撃で、磁気ヘッドが故障することがあります。磁気ヘッドが故障すると、同じ場所を往復するなど正常に動作しなくなります。磁気ヘッドのアーム部分がストッパーにあたり、データの読み込みが正常にできず、「カチカチ」と異音が発生します。
さらに、磁気ヘッドがプラッタと接触すると、「カチカチ」などの異音に加え、擦れたような異音もします。プラッタに接触したまま使い続けると、プラッタが傷つきデータを損傷する可能性があります。磁気ヘッドに接触していることが考えられる場合は、HDDの使用を中止しましょう。
不良セクタとはなんらかの原因によって、データの読み書きができなくなっている箇所のことです。不良セクタはHDDの製造段階から存在しており、メンテナンス機能によってその箇所を避けてデータの読み書きが行われます。HDDの経年劣化などによって領域が拡大すると、メンテナンス機能では修復できず、正常に動作しなくなり異音が発生します。
HDDは、ファームウェアによって動作を制御されています。ファームウェアは、HDD内のチップに搭載されています。
チップに搭載されたファームウェアが破損すると、磁気ヘッドやストッパーへ正しい指示を出せません。そのため磁気ヘッドが正常に動かない、データの読み書きができないなどの不具合が起こり、「カチカチ」などの異音が発生します。
HDDから異音がする場合は、危険な状態の可能性が高いです。データを消失する可能性もあるため、早めの対処が必要です。対処方法は以下の通りです。
HDDから異音がしている場合、素人が対処することは難しいケースが多いです。HDDやパソコンの状況から、対処法を実行しましょう。異音が発生している場合にできる対処法を、詳しく紹介します。
パソコン内部から異音がする場合、内蔵HDDからの異音か、別の箇所からの異音かを特定する必要があります。例えば「ブーン」と音がする場合は、HDDではなく冷却ファンの音の可能性もあります。
冷却ファンが原因の場合は、以下の方法で改善するケースもあります。
ファンにホコリが付くと回転数が上がり、異音の原因になることがあります。また、ファンとケーブルが接触している場合は、結束バンドで固定することでケーブルがファンにあたらないようなります。
パソコン内部の温度が高温になると、排熱のためにファンの回転数が上がり、音が大きくなります。そのため涼しい部屋で、パソコンの電源を落とし、ケーブル類をすべて外し放熱すれば異音がなくなる可能性があります。
HDDから異音がする場合は、HDDに通電をやめて操作もやめましょう。外付けHDDはパソコンから取り外し、内蔵HDDならパソコンの電源を切りましょう。
HDDから異音がする場合は、物理障害を起こしている可能性が高く、通電を続けることで症状が悪化する可能性があります。異音が大きくなったり、データの取り出しが不可能になるケースもあります。
HDDから異音がする場合、それ以上の作業は症状を悪化させる可能性があります、データのバックアップを取るのはHDDに負荷がかかり、バックアップ中にHDDが動作を停止する可能性もあります。
データのバックアップが取れる状態であることを慎重に判断し、実行しましょう。ある程度パソコンの知識があれば、内蔵HDDを取り出し、他のパソコンとつなぎデータをコピーする方法もあります。しかし、HDDが完全に壊れるリスクもあるため、難しい場合は専門業者へデータ取り出しを依頼するのがおすすめです。
HDDから異音がして、さらに認識しない場合は、重度の物理障害が発生していることがほとんどです。HDDは経年劣化や、衝撃などで破損しやすい精密機械です。
異音がしているHDDを無理に認識させようとして動作を続けると、データを完全に損傷し、復旧も難しくなります。早めに専門のデータ取り出し業者への依頼がおすすめです。HDD内のデータよりも、パソコンの復旧を希望する場合はメーカーや購入店などに修理を依頼しましょう。
HDDを3~5年程度使用している場合は、寿命の可能性があります。寿命の場合は修理するよりも、HDDを交換するのがおすすめです。HDDは、知識があれば自分で交換も可能。難しい場合は、外付けHDDの利用やパソコンごと買い替えることも検討しましょう。
パソコンを買い替えたら、適切に処分する必要があります。パソコン処分.comなら不要なパソコンを箱に詰めて送るだけで、処分可能です。事前連絡不要、データ消去も不要のため、手軽な点もおすすめです。
HDDの交換方法や認識しない場合の対処法に関しては、下記記事でも詳しく紹介しています。
HDDの交換は自分でもできる!デスクトップ・ノートPCでの手順を解説>>
【内蔵・外付け共通】HDDを認識しないときの対処法を解説!>>
HDDから異音がする場合は、以下のように注意することもあります。
これらの点に注意しなければ、HDDが完全に故障し、パソコンも動作しなくなる可能性もあります。HDDの不具合を最小限に留めるためにも、注意しましょう。それぞれ、順番に解説します。
HDDから異音がする場合は、すぐに電源を切りHDDに通電しないようにしましょう。
HDDに通電を続けると、磁気ヘッドが不規則に動作し、プラッタに接触してより深刻なダメージを与える可能性が高くなります。プラッタの傷が深くなると、データを損傷し、復元も難しくなります。
電源のオン・オフはHDDに大きな負担がかかる作業です。HDDが正常に動作しない場合、慌ててパソコンの電源のオン・オフを繰り返してしまいがちですが、多くの場合は症状が悪化します。
HDDに不具合がある場合は、異音の有無にかかわらず電源のオン・オフを繰り返さないようにしましょう。
パソコンの再起動も、同じくHDDにとって負担が大きい動作です。パソコンに不具合がある場合は、再起動を繰り返すこともありますが、HDDから異音がする場合は避けた方が無難です。症状をさらに進行させるケースもあるため、パソコンの電源を切ってHDDを修理しましょう。
HDDは、少しのちりやホコリでも内部に入ると障害が起こります。そのため専門業者は、ホコリの不着を避けるためにHDDの開封をクリーンルームでおこないます。通常の環境でHDDを分解すると、ホコリが付着し症状が悪化します。
また、磁気ヘッドとプラッタのすき間はわずか数ナノミリメートルです。手で触って少しでも位置が変わると、プラッタを傷つける原因にもなりかねません。
HDDの開封や分解は、クリーンルームと熟練した技術や専門知識が必要です。開封することで、メーカー保証の対象外にもなるため、絶対に分解や開封はしないようにしましょう。
HDDでデータの読み書きができなくなっても、HDDを叩いたり、揺らしたりしてはいけません。
HDDは繊細で精密な機械であり、少しの衝撃でも障害が起こる可能性があります。異音が発生しているHDDは、すでに障害が起こっているため慎重に扱う必要があります。
叩くなど衝撃を与えることで、磁気ヘッドが異常な動きをして、プラッタが傷つき、データの取り出しが不可能になることもあります。
データ復元ソフトは、物理障害には対応していません。異音が発生している状態では、物理障害を起こしている可能性が高く、データ復元ソフトをダウンロードし、何度もスキャンすることで症状が悪化する可能性があります。
データ復旧の専門業者でも取り出し不可能になる可能性もあるため、異音の原因がわからない場合は使用を避けましょう。
HDDから異音がすると、ほうっておいても改善することはありません。HDDから異音がする場合は、すでに物理障害が起こっている可能性が高く、HDDが致命的な状態になっているケースも少なくありません。
HDDから異音がする場合は放置せず、電源を切って適切な対処法を実行しましょう。
HDDは、通常の動作でも「ジージー」「カリカリ」などシーク音と呼ばれる音が発生します。しかし、「カチカチ」「カクンカクン」など大きな異音がする場合は、物理障害を起こしている可能性が高いです。
異音がする場合は、すぐに電源を切り、操作をやめるのがおすすめです。データを取り出せる場合は取り出しますが、HDDが物理障害を起こしている場合は途中で止まる可能性もあり、データが完全に取り出せなくなる可能性もあります。
難しい場合は、専門のデータ取り出し業者に依頼しましょう。データよりもパソコンの復旧を優先させる場合は、パソコンメーカーや購入店で修理がおすすめです。
HDDの寿命は3~5年程度のため、経年劣化によって不具合が起こった場合はパソコンごと買い替えるのもおすすめです。
監修者/前田 知伸
富士通を経て、リブート㈱代表取締役。パソコンリサイクル業15年目。国内外のIT資格を保有。NHKなど出演実績有り。