ハードディスクの故障はある日突然起こります。
パソコンの起動ができない、保存したデータが読み込めないということが起きていればハードディスクの故障が疑わしくなってきます。
この記事では
について解説していきます。
目次
最初に、ハードディスクの障害・故障を診断する方法を4つご紹介します。
異常を早めに発見して、適切な対処を行いましょう。
ハードディスクから「カチカチ…」「カタカタ…」といった動作音がする場合、機器に不具合が生じていることが考えられます。
ハードディスクを守るためには、すぐに使用を中止し、修復作業は行わないようにしてください。
ただし、ハードディスクがデータを読み書きする際にも似たような音がなるため、その他の診断方法と合わせて判断することをおすすめします。
Windowsの標準ツールである「ディスクの管理」を実施することで、ハードディスクがWindowsに正しく認識されているかを診断できます。
「ディスクの管理」の実施手順は以下の2パターンです。
【Windowsでディスクの管理を実施する方法】
診断の結果、ハードディスクが正しく表示され、ドライブ容量などを確認できれば特に異常はありません。
ただし、Windowsでディスクが認識されなかった場合、何かしらの物理障害が考えられます。
この状態で修復作業を行うと、機器を完全に故障させる恐れがあるため注意してください。
ハードディスクには、40件以上の検査項目をモニタリングする「S.M.A.R.T.情報」が搭載されており、エラー回数などをチェックできます。
結果を簡単に確認したい場合は、「Crystal Disk Info」というフリーソフトを利用するとよいでしょう。
検査項目のなかに赤や黄色で表示されているものがある時は、故障の恐れがあるため注意してください。
特にリードエラーが発生している場合、深刻な物理障害が考えられます。
チェックディスクはシステムファイルの破損を検出して自動修復を行う機能で、Windowsに標準搭載されています。
ただし、チェックディスクを実施しても、ハードディスクの物理障害は修復できないため注意してください。
また、物理的な故障が起きている時にチェックディスクを行うと、状態が深刻化するリスクがあります。
ひとくちにハードディスクの不具合といっても、故障の状況によって適切な対処法が異なります。
ここでは、最初に確認すべき3つのポイントについて解説します。
ハードディスクの故障が疑われる場合、物理障害か論理障害のどちらが発生しているのかを必ず確認しておきましょう。
論理障害の場合、修復ツールやデータ復元ソフトを活用することで修復できる可能性があります。
一方、物理障害の場合、自分で対応することはほぼ不可能です。
また、修復作業を行うことでかえってハードディスクの状態が悪化する恐れがあります。
物理障害と論理障害の主な違いは以下のとおりです。
障害区分 | 物理障害 | 論理障害 |
故障部位 | ハードディスク本体 | データ・システム |
自力での対応 | 不可 | 可能 |
症状 | 本体から異音・異臭がする起動できなくなる | ファイルが勝手に削除されるデータが勝手に上書きされるデータが初期化される |
対処法 | 専門業者に依頼する | 専門業者に依頼するデータ復元ツールを使う修復ツールを使う |
データ復元ソフトを使用する際は、利用中のハードディスクやOSに対応しているかどうかを事前に確認しておく必要があります。
特にMac端末の場合、データ復元ソフトが使用できないケースも少なくありません。
また、一般向けに販売されている市販ソフトでは対応できない不具合も多々あります。
必要に応じて、データ復旧の専門業者を利用するとよいでしょう。
ハードディスクの修復作業を行う前に、データのバックアップが取れているかを忘れずに確認しておきましょう。
作業の途中でデータが消えてしまうリスクがあるため、正常時にバックアップをこまめに取っておくことが理想的です。
また、バックアップがある場合は「新しいハードディスクに買い替える」という選択肢を選ぶこともできます。
ハードディスクは物理的に動くパーツで構成されているためCPUやメモリに比べると壊れやすいといえます。
ハードディスクは動く部品で構成されているため必ず摩耗して劣化していきます。
プラッタは1分間に5000回転以上の高速で回転し、磁気を読み込むためのヘッドはプラッタ上の情報を読み込むためにあちこちに動き回ります。
プラッタの表面が劣化してきたり、磁気ヘッドがわずかでも触れてしまったりするとその部分は読み込めない「不良セクタ」になってしまいます。
そのうちに不良セクタが増えていくとハードディスクは役目を果たさなくなってしまいます。
ハードディスクの寿命は一般的に4、5年といわれており、時間に換算すると26,000~35,000時間とされていますが、使用環境や使い方によっても変わってきます。
また最近では駆動時間ではなく、駆動回数ともいわれているようになってきていますが、概ね5年を超すと故障率が上がってくることは間違いないようです。
いずれにしてもハードディスクは消耗品であることを念頭に置いておきましょう。
ハードディスクの寿命は3~4年!故障の前兆や症状、診断方法を解説>>
ハードディスクのプラッタとデータを読み取る磁気ヘッドの距離はわずか数ナノメートルしかありません。
そのため衝撃が加わると簡単にプラッタにヘッドが接触してしまいます。
また停電やブレーカーが落ちてしまったなどが原因で突然シャットダウンすると回転中のプラッタが急に止まってしまい、ヘッドに接触することがあります。
強制終了も同様に突然電源が落とすことになるので、ハードディスクにとってよくありません。
パソコンに衝撃を与えたり、突然電源が落ちてしまわないように注意しましょう。
ハードディスクは磁気を利用してデータを読み取っているため、強力な磁気を浴びると機能しなくなることがあります。
ただし、一般家庭にある磁石などでは壊れることはありません。
どちらかというと故障というより、データを消去し、破壊するために強力な磁気を浴びせることの方が多いでしょう。
わざとやろうとしない限りはあまり心配しなくても大丈夫です。
落雷によって過電流が流れてしまうとショートしてしまいハードディスクのトラブルの原因となります。
落雷を予期してパソコンの電源を抜いておくことは難しいとは思いますが、近くで雷が鳴っているときはパソコンの利用は控えた方がよいでしょう。
ハードディスクも他のパソコンパーツと同様に熱に強く設計されていません。
気温の高い部屋や温度変化の激しい部屋でのパソコン利用は控えた方がよいでしょう。
寒暖差が激しくなると結露が生じ、故障の原因となります。
またハードディスクの内部は埃や異物の侵入を防ぐために密閉されてはいますが、完全ではありません。
タバコの煙や埃が多い環境での使用もハードディスクの寿命を縮めることになるので、清掃された環境でパソコンを使いましょう。
ハードディスクの故障には「物理障害」と「論理障害」の2種類があります。
物理障害はその通り物理的に異常が見られる故障です。
衝撃や高温多湿の環境、埃が溜まっているなど様々な原因が考えられます。
外から見たり聞いたりして発覚するので比較的わかりやすいといえるでしょう。
ちなみに物理障害が起きてしまったハードディスクは自力で直すことは困難です。
パソコンを起動して「カラカラ」や「ガリガリ」などの異常な音がする場合はハードディスク内部のプラッタやモーターが故障している可能性が高くなります。
データが読み込めていてもそう遠くないうちに故障するので、早めにバックアップを取っておきましょう。
焦げ臭い匂いがする場合はハードディスクがショートして異常な電流が流れている可能性があります。
その場合はただちにパソコンの使用を中止しましょう。
最悪データの破損だけではなく、火災に繋がる危険性もあります。
不良セクタはハードディスクのプラッタや磁気ヘッドが劣化してくると現れる物理的な故障の症状です。
不良セクタには物理的なものとファイルシステムに起因するものがありますが、異音がするなどの場合はプラッタに異常が起きていると考えて良いでしょう。
不良セクタは少しぐらいであれば問題にはなりませんが、限界はあります。
プラッタ表面に不良セクタが増えてきたハードディスクはもはや寿命と考えて差し支えありません。
論理障害はハードディスクは正常に動いているのにデータが読み込めないなどの異常を指します。
物理的に損傷していないため、元に戻せる可能性が高い故障です。
原因としては誤ってファイルを消してしまった、フォーマットしてしまったなどが挙げられます。
また書き込み中に電源が落ちた、強制終了させた場合もファイルの破損に繋がります。
保存してあるファイルが開けない、保存できないといった場合はファイルシステムに障害が起きていることがあります。
データを保存してある場所の情報をファイルシステムといいますが、その情報が人的エラーや書き込み中の強制終了などでバラバラになってしまうと読み込みや書き込みができなくなってしまいます。
パソコンが起動しない場合はハードディスクの論理障害の可能性もあります。
起動しないだけでハードディスクの異常と確定することは難しいのですが、マザーボードなどに異常がなく、OSが起動しない場合は何らかの原因で起動プログラムが読み込めていないということになります。
パソコンが立ち上がらない!起動しない原因と黒い画面になった時の対処法>>
ハードディスクに物理障害や論理障害が起きてしまっても復旧できる可能性はあります。
特に論理障害の場合は自分で直せることもあるので、それぞれの方法を紹介していきます。
物理的に壊れてしまったハードディスクを自分で直すことは不可能に近いといえます。
そもそもハードディスクは消耗品であるため、すり減ってしまった部分を元に戻して再度利用するということは現実的ではありません。
異音がする、焦げ臭いなどの物理障害が起きてしまったハードディスクは早めに専門の業者に依頼し、データを取り出せるか相談しましょう。
料金の目安は以下の通りです。
症状の重さ | 料金目安 |
---|---|
軽度障害 | 4~12万円 |
中度障害 | 10~40万円 |
重度障害 | 20~70万円 |
物理障害の場合は料金が高くなりがちです。
どうしても復旧させなければならないデータの場合は仕方ありませんが、あとで入れ直せるデータの場合はハードディスクを買い替えた方が安上がりになります。
論理障害は物理的に壊れているわけではないので、復旧の可能性は高くなります。
読み込めないファイルが増えてきてしまった場合は一度フォーマットすると正常に動作することがあります。
フォーマットをすると一見全てのデータが消去されたように見えますが、専用のソフトを使用すればフォーマット以前の情報を復旧できる可能性が高くなります。
ただしフォーマットした後に新たにデータを保存していくと次々と上書きされていくことになりますので、元のデータの復旧が難しくなることは覚えておきましょう。
ハードディスクの異常を復旧させるソフトを紹介していきます。
有料のものと無料のものがありますが、一般的に有料のものの方が復旧率が高く、復旧データ量に制限がありません。無料版は主に500MB~2GBの復旧制限があるので、今時のパソコンの容量としては少々心許ないといえます。
費用はかかりますが、有料版のものが間違いはないでしょう。
有料、無料それぞれのおすすめを紹介します。
ソフト | 値段 | 特徴 |
---|---|---|
EaseUS Data Recovery Wizard Pro 14.5 | 9,750円 | 復旧率97.5% |
ファイナルデータ11 プラス | ダウンロード版7,110円 パッケージ版10,810円 | 初心者でも簡単な操作 |
Recuva | 無料 | 無料ソフトの中では優秀 |
EaseUS Data Recovery Wizard Free 無料体験版 | 無料 | SNSで共有すると2GBまで復旧可能 |
有料版のおすすめはEaseUS Data Recovery Wizard Pro 14.5です。
このソフトは復旧率が97.3%と非常に高くなっているので、迷ったらこのソフトを選べば問題ないでしょう。
無料版ではRecuvaがおすすめです。歴史の長いソフトで使い方も簡単です。
とりえあずRecuvaで試して、ダメだったら有料版を使うという方法もありますので、まずは無料版を使ってみましょう。
パソコンが起動しないなどの場合は復旧ソフトは使えません。
その場合は専門業者に依頼するのが一番です。
料金の相場は以下の通りです。
症状の重さ | 料金目安 |
---|---|
軽度障害 | 3~6万円 |
中度障害 | 5~10万円 |
重度障害 | 10~25万円 |
データの復旧料金は障害の程度やデータ量によって変わってきます。
安い金額ではないので、一度見積もりを取ってもらうようにしましょう。
ハードディスクはある日突然壊れてしまうこともあります。
復旧の方法はいくつかあるとはいえ、100%復旧できる保証はありません。
日頃からバックアップを取っておくようにしましょう。
バックアップを取る場合は外付けのハードディスクがおすすめです。
理由としては
というものが挙げられます。
ハードディスク自体をパソコンに増設することも可能ですが、本体と一緒に稼働してしまうので寿命は短くなります。
また落雷等の過電流を防ぐことはできないのでバックアップとしては少々不安が残ります。
特段の理由がない限りは外付けのハードディスクに保存することをおすすめします。
外付けのハードディスクも物理的に壊れる可能性はゼロではないので、本当に重要なデータはクラウド上に保存した方がよいでしょう。
クラウドに保存する方法は物理的な故障が起きないだけではなく、どのパソコンからでもアクセスできることもメリットの一つです。
また自動的に保存されるためわざわざバックアップする手間もありません。
ある程度の容量になると月額の料金がかかってきますが、絶対に失いたくないデータを保存するには最適の保存方法といえるでしょう。
おすすめのクラウドは以下の通りです。
料金プラン | 特徴 | |
---|---|---|
Google Drive | ・680円 1名/月 Basic:30GB ・1380円 1名/月 Business:容量無制限 ・3000円 1名/月 Enterprise:容量無制限+高度なセキュリティ機能 ※価格は税別 | ・1380円で無制限 ・Googleが提供しているので安心感が高い |
OneDrive for Business | ・540円 1名/月 OneDrive for Business (Plan 1):1TB ・1090円 1名/月 OneDrive for Business (Plan 2):1TB+高度なセキュリティ機能 ・1360円 1名/月 Office 365 Business Premium:1TB+高度なセキュリティ機能+Officeアプリケーション ※価格は税別 | ・低価格で大容量 ・Officeとの連携が便利 |
iCloud | ・130円/月 50GB ・400円/月 200GB ・1300円/月 2T ※価格は税込 | ・iPhoneとの連携が便利 |
基本的にどのOSでもクラウドは使うことができるので、持っているパソコンのOSや容量、スマートフォンとの相性も含めてクラウドサービスを選びましょう。
消耗品のハードディスクですが、できれば長く動いてほしいものです。
ハードディスクの寿命を延ばす方法を解説していきます。
ハードディスクに限らずパソコンに衝撃を与えることは避けましょう。
不安定なところに設置したり、運搬中に落としたりするとハードディスク以外の部分の故障にも繋がります。
デスクに置く場合はコードなどを引っかけて落とさないよう配線を工夫しましょう。
ノートパソコンも持ち歩くときにはケースに入れるなど、衝撃が加わらないように保護しておくとより安心です。
パソコンは熱に弱く、ハードディスクも例外ではありません。
高温にさらされれば部品の劣化が早まりますし、正常に動作もしにくくなります。
熱をこもらせないために排気口や吸入口が塞がれていないか確認しましょう。
また夏場など室温が高い場合は十分に冷却することができなくなりますので、エアコンを適切に使用して室温を下げることも忘れないようにしましょう。
ハードディスクはデータの保存や削除を繰り返していくと、データが断片化し、情報を読み込むのに時間がかかるようになります。
バラバラになったままではファイルを探すのに時間がかかり、その分プラッタを読み込む時間が増えます。
そこでバラバラの情報を整理するための機能がデフラグ(方法はこちら)となります。
デフラグはもともとWindowsに標準で搭載されている機能なので、追加で費用がかかることはありません。
定期的にデフラグを実施し、ハードディスクの負担を軽減しましょう。
パソコンの電源が突然切れると、高速回転しているハードディスクのプラッタが止まってしまい、ダメージを与える場合があります。
書き込みの途中だった場合はより強く影響を受けるので、パソコンを使用しているときはブレーカーが落ちないように注意しましょう。
またフリーズしてしまったなどやむを得ない場合以外は強制終了を避け、正しくシャットダウンすることでハードディスクへのダメージを抑制できます。
ノートパソコンの場合はバッテリーがあるので、突然電源が落ちることは希ですがバッテリー切れには注意しておいた方がよいでしょう。
埃やタバコの煙などは電子機器に悪影響を与えます。
吸入口が埃だらけになればパソコン内部を十分に冷却することができず、ハードディスクを始めパソコンの寿命が短くなります。
ハードディスクのケースはある程度の埃や異物は入らないようになっていますが、完全に防ぐことはできません。
定期的に掃除をして、エアフローなどの影響を最小限に抑えましょう。
ハードディスクに不具合が生じた際、誤った対処を行うと状態が悪化する恐れがあります。
ここでは、ハードディスクの故障時にやってはいけないことを4つ解説します。
ハードディスクの故障が疑われる場合、パソコンを何度も再起動しないように注意してください。
電源のON・OFFを行うたびにハードディスクに強い負担がかかり、磁気ヘッドやディスク面の傷が悪化する可能性があります。
電源を入れない限りハードディスクの不具合は進行しないため、電源を切った状態で専門業者の指示を待ちましょう。
ハードディスクに少しでも異常が見られた際は、そのまま放置せずすぐに適切な対処を行いましょう。
不具合を無視したまま使用し続けると、故障が悪化するだけでなく取り返しのつかない状態になる恐れがあります。
また、ハードディスクの状態が悪ければ悪いほど修理費用も高くなりやすい点もデメリットです。
専門的な知識がない場合は、ハードディスクを不用意に分解しないよう注意してください。
ハードディスクの状態が悪化するだけでなく、正常なパーツにまで故障が広がったり、データを失ったりするリスクがあります。
また、一度ハードディスクを分解してしまうと、多くのメーカーで保証を受けられなくなる点もデメリットです。
メーカー保証外のパソコンは修理費用が高額になりやすいため、できるだけそのままの状態で専門業者の指示を仰ぐことをおすすめします。
ハードディスクを修理する目的でも、本体を叩く・振るといった衝撃を与える行為は絶対に行わないようにしてください。
ハードディスクは衝撃に弱いため、不具合が悪化する恐れがあります。
さらに、衝撃によって大切なデータが消えてしまうケースも少なくありません。
修理のためにパソコンを移動させる際は、ハードケースなどに入れて持ち運ぶとよいでしょう。
以上ハードディスクの故障の原因から症状、対処方法を解説してきました。
動く部品が多いためハードディスクの劣化は避けようがありませんが、可能な限り寿命を延ばすためには衝撃を与えず、適切な室内でパソコンを使用することが重要です。
埃やタバコの煙も悪影響を与えますので、喫煙などは別の場所でしたほうがよいでしょう。
故障してしまった場合でも復旧の方法はいくつかありますので、予算や症状に合わせて選びましょう。
監修者/前田 知伸
富士通を経て、リブート㈱代表取締役。パソコンリサイクル業15年目。国内外のIT資格を保有。NHKなど出演実績有り。