「液晶画面にノイズが入ったり、ゲーム中の動作がやたら重かったりする・・・。もしかして、グラフィックボードが故障した?」
パソコンの不具合の中でも、特にこういった画面系の不具合が出ると、グラボが故障したのではないかと不安になりますよね。
高解像度のゲームをしたり動画を作ったりする場合、グラフィックボードの存在は必須となります。
そんなグラボが故障してしまったのではないかと思うと、心配でたまらないでしょう。
そこでこの記事は、グラボの故障原因や故障前の前兆症状、本当にグラボが故障してしまったのかを診断する方法などについて解説していきます。
一般的な使用方法ならば約5年はもつと言われているグラボですが、パソコンの使用方法や使用環境が悪いと早めに故障してしまうこともあるので要注意です。
【この記事でわかること】
グラフィックボードとは、パソコンの画面表示系作業を助けるためのパーツで、略して「グラボ」とも呼ばれます。
グラボがなくてもパソコンは動きますが、動画作成やゲームといった重い作業をする場合には、グラボが搭載されていないと画面表示処理が著しく重くなってしまい、「画面がカクつく」・「フリーズする」といった操作感の悪い環境に甘んじなければなりません。
そうならないために存在するのがグラボです。
CPUだけでもある程度の画面表示は可能なのですが、解像度の高いグラフィックを用いたゲームなどをやる場合にはグラボの搭載が必須となります。
グラボはそれなりに耐久性のあるパーツですが、使用方法によってはその寿命を縮めてしまうことになります。
少しでも長く使用できるよう、以下のことに気を付けてください。
一応、経年劣化も故障原因の一つにはなりますが、こればかりはどうしようもありません。
パソコン内のパーツはすべて消耗品ですから、使えば使うほど劣化してしまいます。
経年劣化を避けることはできません。
グラボの寿命は約5年程度と言われているので、一般的な範囲でパソコンを使用し、5年以上経っているようならば、故障してもやむを得ないと諦めるしかないでしょう。
精密機械であるパソコンは、落下や踏みつけといった物理的な衝撃に非常に脆い製品です。
パソコン内に取り付けられているグラボも、衝撃によって変形・破損してしまうことがあります。
特にノートパソコンは持ち運ぶ機会も多いため、こうしたトラブルが起きやすいので要注意でしょう。
こういった環境はパソコンにとって劣悪であり、グラボを始めとする各パーツにダメージを与えてしまいます。
精密機械にとって「熱」・「湿気」・「ホコリ」は大敵ですので、いずれか一つでも当てはまる環境でのパソコンの使用は、確実にグラボの寿命を縮めてしまいます。
オーバークロックとは、CPUの性能を本来の規格以上のものへと高め、パソコンの処理能力を上げて動作を軽くさせることです。
買い替えることなく、性能の上がったパソコンを手に入れられるという点では非常に便利な方法です。
しかし、メリットばかりではありません。
オーバークロックには、以下のようなデメリットも存在します。
特に、最後の項目です。
CPUの性能が上がっても、他のパーツの性能はそのままですから、当然他のパーツには負荷をかけることになります。
グラボも、負荷をかけられてしまうパーツの一つです。
負荷がかかれば、当然故障リスクは上がってしまいます。
グラボに多い故障原因として、「半田割れ」があります。
半田割れとは、鉛とスズを主成分として接続させた合金である「半田(はんだ)」が、割れてしまったり変形してしまったりすることです。
半田割れが起こると、パーツ同士の接続に不具合が生じて接触不良を起こし、正常な動作をすることができなくなってしまいます。
半田割れが発生する原因は、経年劣化や異常な高温です。
また、暑い場所にあったパソコンを冷やそうとして冷蔵庫へ入れるなど、急激な温度変化によって半田が割れてしまう場合もあります。
以下のような症状が発生すると、グラボの故障が近いという前兆である可能性が高いです。
場合によっては、すでに故障してしまっていることもあります。
液晶画面の表示が乱れたり、ノイズが発生したりするといった症状は、グラボの故障が近い代表的な前兆です。
グラフィックボードという名の通り、グラボの役割は画面表示に関わる処理を行うことですから、画面表示に不具合が生じたとなれば、グラボに何らかの異常が起きている可能性が高いです。
また、画面が真っ暗になってしまうという症状も代表的な前兆症状の一つです。
こうしたファンの異常が確認できた場合は、グラボに異常が発生している可能性ありです。
グラボに溜まっている熱を排除するために動くはずのファンが、排熱が上手くいっていないことで異常回転したり、逆にまったく動かなくなってしまったりすることがあります。
ただし、熱がこもるほどでもない軽い作業の場合は、ファンが回らないこともあります。
排熱が上手くいかないことで、ファンから普段聞かないような変な音がしたり、コンデンサの膨張や焦げ付きによって異臭が発生する場合があります。
また、グラボから「キーン」という高周波音がすることもあります。
この段階では、グラボはまだ完全には故障しておらず、「一応使える」という状態であることが多いです。
しかしそんな状況に甘えて使用を続けると、発火の原因にもなりかねないため、すぐに何らかの対処をすべきでしょう。
問題なく動いているようでも、いつ動かなくなるかは時間の問題です。
パソコンから異音がする原因に関してはこちらの記事でも詳しく解説しています。
マウスを動かした時にポインタの動きが遅い、というのもグラボ故障の前兆であることが多いです。
グラボの劣化により表示処理が遅れていることで発生する現象です。
また、キーボードの入力内容が正しく反映されない、という誤作動が発生する場合もあります。
CPUだけでは対処しきれないような、動画作成や高解像度ゲームといった重い作業をする際の画面表示を助けるのがグラフィックボードです。
従って、動画作成時やゲーム中にやたらとカクカクした動きになってきた場合、それはグラボとしての役割を果たせなくなってきたサインであり、それだけ劣化が進んでいるということになります。
特に経年劣化や熱による劣化によって起こりやすい症状です。
パソコンに何かしらのトラブルが起こった時に発生しやすい症状である、いきなりの再起動やフリーズ。
当然、グラボの故障の前兆としても発生する可能性があります。
ただし、フリーズや再起動、突然のシャットダウンといった症状だけではグラボの故障とは限りませんので、上記のようなグラボ特有の症状があるかどうかも確認してください。
画面系の不具合に加えて再起動やフリーズが頻発するようならば、グラボの故障が疑われます。
パソコンのフリーズに関してはこちらの記事でも詳しく解説しています。
パソコンが頻繁にフリーズする原因と対処法!強制終了の方法も解説>>
グラボの故障が疑われるような症状が現れても、本当に故障したのかどうかはまだわかりません。
故障箇所が本当にグラボなのかを確かめるためには、以下の方法を試してみてください。
使っているパソコンがWindowsパソコンならば、デバイスマネージャーを使うことによって簡単に「グラボにエラーが発生しているかどうか」を確認することができます。
デバイスマネージャーでの確認手順は以下の通りです。
「デバイスの状態」欄には、通常ならば「このデバイスは正常に動作しています」というメッセージが表示されていますが、「問題が発生しましたのでこのデバイスは停止しました」といったエラーメッセージが表示されている場合は、グラボに何らかの不具合が生じているということを表しています。
使っているパソコンがMacパソコンならば、Apple Diagnostics (旧称 Apple Hardware Test)を使うことで、ハードウェアに問題がないか調べることができます。
グラボもハードウェアなので、Apple Diagnosticsによって不具合を検出できます。
手順は以下の通りです。(Appleシリコン搭載の場合)
最後の診断結果表示で、「問題は検出されませんでした」と表示されればグラボに異常はないということになります。
なお、上記は「Appleシリコン搭載」の場合でしたが、「Intel プロセッサ搭載」の場合は、「3.」で電源を入れた後すぐに「D」キーを押し、進行状況バーが表示されるまで「D」キーを押し続けてください。
参考:Apple Diagnostics を使って Mac をテストする – Apple サポート (日本)
パソコンを開け、一時的にグラボを取り出してから起動させてみることで、故障箇所がグラボかどうか断定することができます。
CPUに画面表示機能が備わっているため、グラボがなくともパソコンの画面表示には問題ありません。
従って、一旦グラボを取り外してからパソコンを立ち上げて操作した時に、それまで出ていた不具合が解消されれば、グラボの故障が確定します。
ただし、グラボを取り外す際に強引に外そうとしたことで部品が変形したり、他のパーツを傷つけてしまったりすることで違う不具合を生んでしまう可能性もありますので、パソコンを開いてグラボを外す場合には慎重に作業を行ってください。
システムトラブル等、不具合の内容がソフトウェア的なものならば、パソコンを初期化することで直ることもあります。
ソフトウェアの故障なのかハードウェアの故障なのかを調べたい場合は、一度初期化してみるという手段も有効です。
【Windowsパソコンの初期化方法】手順や注意点をわかりやすく解説>>
初期化しても直らないようならば、グラボなどのハードウェア面での故障である可能性が非常に高くなります。
グラボが故障しても、即パソコンが使えなくなるというわけではありませんが、画面系の重い作業をこなすのが困難になってしまいます。
そんなことにならないよう、以下の点に気を付けながらグラボを労わり長持ちさせてください。
デスクトップパソコンならば物理的な衝撃が加わってしまうという場面は少ないですが、ノートパソコンの場合は持ち運びすることが前提のため、衝撃を与えてしまうリスクが高いです。
特に多いのが以下の3つです。
部屋から部屋へと気軽に持ち運べるのがノートパソコンのメリットですが、その際に手をすべらせて落下させてしまうということがあります。
パソコンを持ち運ぶ時は、細心の注意を払ってください。
また、床にノートパソコンを置いて寝転びながら作業している人に多いのが、踏みつけによる衝撃です。
薄いノートパソコンに全体重が乗ってしまえば、容易に壊れてしまいます。
できれば、床に置いて寝転びながらパソコンを使うという習慣はなくした方がよいでしょう。
そして意外に多いのが、ノートパソコンを鞄に入れて移動する際に雑に扱ってしまう、というケースです。
精密機械であるノートパソコンが入っているのに、そこそこの勢いで地面に鞄を置く人がいます。
最近の製品は軽い衝撃では簡単に壊れないものの、物理的なダメージというのは蓄積しますので、このような雑な扱いを繰り返していけば、早めに壊れてしまう確率はどんどん上がってしまうでしょう。
とにかく、パソコンの扱いには徹底的に気を配ること。
それが、パソコンを物理的なダメージから守るための最善の対処法です。
湿気やホコリは、パソコンの故障を誘発する大きな原因となります。
もちろん、グラボもダメージを受けます。
パソコンを使用する際は、風呂場の近くや加湿器の近くといった湿気の多い場所を避けることはもちろん、ホコリだらけの不衛生な場所もNGとなります。
こうした場所でパソコンを使うことは控えましょう。
直射日光に当たってしまう場所でパソコンを使用・保管したり、暑い部屋で長時間重い作業をしたりすることで、パソコン内部が異常に熱くなってしまうことがあります。
湿気やホコリ同様、熱も精密機械の大敵。
パソコン内に熱がこもってしまうと、グラボを始めとする各重要パーツに負荷がかかりますし、半田割れを起こす場合もあります。
パソコンは、適切な室温が保たれた通気性の良い場所で使用するようにしてください。
そしてパソコンが異常に熱くなっていたり冷却ファンの音が大きくなっていたりしたら、使っていないソフトを落としたり、一度再起動するなどの対応を取るようにしてください。
オーバークロックは、パソコンの処理能力を上げる便利な方法ではありますが、前述の通り以下のようなデメリットがあります。
せっかく処理能力が上がっても、その代償としてグラボなどの重要パーツが故障しやすくなってしまったのでは意味がありません。
何か特別な理由でもない限り、オーバークロックは避けた方が良いでしょう。
グラボの故障原因は、主に以下の5つです。
経年劣化と物理的な衝撃による破損以外は、ほとんど熱関連のトラブルとなります。
高温な環境でパソコンを使用して熱がこもりやすくなること、オーバークロックによって各パーツが熱を持ちやすくなること、熱によって半田が割れてしまうこと、といったように。
グラボを長持ちさせる最大のコツは、とにかく「熱に気を付けること」といっても過言ではないでしょう。
なお、どれだけ丁寧にパソコンを使用してきても、消耗品であるがゆえ、いつかはどこかのパーツが故障します。
グラボだけが壊れたのならば、グラボを取り外せば一応パソコンは使えますが、CPUや電源ユニットといった他の重要パーツが故障した場合はそうもいきません。
費用をかけて交換・修理するか、パソコンを買い替える必要が出てきます。
グラボを交換して廃棄する場合は以下の記事を参考にしてください。
監修者/前田 知伸
富士通を経て、リブート㈱代表取締役。パソコンリサイクル業15年目。国内外のIT資格を保有。NHKなど出演実績有り。