「パソコンの調子が悪い・・・。これってもしかして、SSDの故障が原因?」
このように、パソコンがうまく起動しなかったり、操作中に動作が重かったりした時に、SSD(Solid State Drive)が故障しているかもしれないと不安になる方も多いと思われます。
SSDは壊れにくい構造になっているものの、パソコンの使い方や使用環境によっては短命に終わってしまうこともあります。
しかし、完全に故障していなければデータだけでも救い出せる可能性がありますし、うまくいけばSSDの復旧に成功することもあります。
そこでこの記事では、以下のような点について解説していきます。
【この記事でわかること】
目次
SSDの構造や、HDDと比較した場合のSSDのメリットやデメリットについて紹介します。
SSDは、主に以下の3つのパーツから構成されています。
イメージ図としては、以下のような形です。
引用:SSDのメリット/デメリット。故障した場合にデータ復旧はできるのか!? | バッファロー
HDDの場合は、回転している磁気ディスクに対して磁気ヘッドが動くことでデータの保存や読み書きを行っていますが、SSDの場合はすべての処理が電気的に行われます。
SSDのメリットについては以下の通りです。
SSDはHDD同様に記憶装置ではありますが、HDDとは構造が異なっているため、ただの記憶装置ではなく処理スピードが非常に早くなっています。
そのため、パソコンの起動にかかる時間も短いですし、パソコン操作中の処理能力も高いため、動作が非常に軽いという特徴があります。
また、物理的な衝撃にも強く、HDDよりも故障リスクが低いです。
HDDは衝撃に弱いため、ちょっとした落下によって破損してしまうこともありますが、SSDならば多少の衝撃が加わっても壊れにくい構造になっています。
消費電力も少ないため、その分HDDよりも長持ちしやすいという点もメリットの一つです。
HDDは3~4年程度で寿命を迎えるのが一般的ですが、SSDは5年程度使用することが可能です。
ハードディスクの寿命は3~4年!故障の前兆や症状、診断方法を解説>>
【SSDの寿命は5年】故障前のSSDの症状や延命方法を徹底解説>>
対するデメリットとしては、主に以下の二つです。
まずは、「価格の高いものが多い」という点。
年々価格は安くなってきてはいますが、それでもHDDと比較するとまだまだ高価です。
従って、大容量のSSDを搭載したパソコンには手を出しにくく、HDDならばテラ単位の容量が当たり前なこのご時世で、数百ギガ程度の容量しか搭載されていないパソコンを購入せざるを得ない、というケースが起こりがちです。
SSDだけでは容量が足りないため、データ保存用として外付けHDDを別で用意しなければならないということがほとんどです。
また、物理的な衝撃には強いSSDですが、SSDに搭載されているフラッシュメモリは熱や電気的なストレスに弱いため、使用方法や使用環境によっては故障リスクが高まってしまう場合もあります。
物理的衝撃には強いSSDですが、パソコンに負荷をかけるような使い方をしていたり、パソコンにとって劣悪な環境で使用を続けることで、故障の原因となってしまいます。
以下に、SSDの故障の原因となりやすいパターンについて列挙していきます。
SSDは消耗品であり、通電している間は徐々に劣化が進んでいくことになります。
夜、パソコンの電源を落とさずに寝る方も多いと思われますが、通電している以上パソコンは常にバックグランドで動いています。
「何も操作していないからパソコンに負荷はかかっていないだろう」という考えは間違いですので、長時間使用しない時はなるべく電源を落とすようにしてください。
電化製品にとって湿気は大敵です。
当然パソコンにとっても湿気は故障リスクであり、SSDはもちろん、その他のパーツにもダメージを与えます。
風呂場の近くや加湿器の近くといった湿気の多い場所でパソコンを使用することは控えるべきでしょう。
パソコンの周りにホコリが多いと、冷却ファンに付着するホコリの量も増えてしまいます。
するとパソコン内部の温度が高温になりやすくなり、SSDの故障リスクが高まります。
SSDは、物理的な衝撃には強いですが熱や電気的なストレスには弱いので、内部に熱がこもるような状況はなるべく避けなければなりません。
また、ホコリには帯電性があるため、静電気によってSSDがダメージを受けてしまう可能性も考えられます。
こうしたダメージからSSDを守るためにも、パソコンの周囲をこまめに掃除し、できるだけホコリの侵入を防ぐよう注意してください。
SSDには、「データの上書きができない」という特性があります。
ファイルの上書き保存を行っても、既存ファイルに上書きするのではなく、新規の領域へ新たにファイルを保存するという処理をするのです。
これを繰り返していくと徐々に空き容量が減っていくわけですが、空き容量が減ってくると過去に上書きされたデータや削除されたデータを消去して空き領域を作り、そこへデータの書き込みを行うという処理をします。
空き容量に余裕があれば、ただ新規の書き込みを行うだけで済むところを、空き容量が少ないと「一旦不要なデータを消去して空き領域を作ってから、その空いた領域に新規の書き込みを行う」という処理が発生してしまうため、SSDに余計な負荷がかかり、寿命が縮まってしまうのです。
サイズの大きい動画のようなファイルはSSDに保存せず、外付けHDDを活用するようにして、SSD内には常にできる限りの空き容量を確保しておきましょう。
SSDは、書き込み回数の上限があらかじめ決められています。
この書き込み可能な総量のことを「TBW(Total Byte Written)」と呼びます。
TBWに達すると、それ以上の書き込みが行えない状態となります。
なお、一般的な範囲でパソコンを使用している場合は、TBWに達してしまうという可能性はほとんどありません。
メーカー側で、かなり余裕を持った数値を設定しているので、尋常じゃないほどのファイルコピーを連日のように繰り返さない限りは、まず問題ないでしょう。
とはいえ、無駄な書き込み(ファイルコピーなど)にメリットは一切ないため、一応気を付けておくに越したことはありません。
SSDの故障には、「物理障害」・「論理障害」・「ファームウェア障害」の3種類が存在します。
物理障害とは、フラッシュメモリなどのSSD内にあるパーツが物理的に破損することで発生する傷害のことです。
物理障害を起こしている場合は、データ復旧が非常に困難となります。
たとえ専門業者に依頼したとしても、データを取り出せる可能性は低いと言わざるを得ません。
論理障害とは、保存してあるファイルが破損したり、データを管理するファイルシステムに異常が発生したりする障害のことです。
物理的に破損しているわけではないため、論理障害の場合はデータを復旧できる可能性が比較的高いです。
また、バックアップを取った上でフォーマット(初期化)することで正常な状態に戻ることもありますし、復旧ソフトを使用するだけで直ることもあります。
SSDは衝撃に強く、物理的な破損が生じることはあまりないため、障害が発生した場合のほとんどがこの論理障害となります。
ただし、あまりに激しい衝撃を加えた場合や、パソコンの使用方法に過度な問題があった場合は物理障害が発生する可能性も出てきてしまいます。
ファームウェア障害とは、SSDを制御するソフトウェアの不具合によって、保存されているデータや残り容量を正しく認識できなくなってしまう障害のことです。
例えば、本来ならば256GBの容量があるにも関わらず、ファームウェアの不具合によって容量を正しく把握することができなくなり、容量が数MB程度しか認識されなくなってしまうというような事態が発生します。
最新のファームウェアにアップデートすることで直ることもありますが、逆にアップデートに失敗してSSDが故障してしまうこともあります。
アップデートを試す前には、必ずデータのバックアップを取っておくようにしてください。
SSDが故障した場合には、以下のような症状が発生しやすくなります。
SSDが完全に故障してしまった場合は、パソコンが起動することは一切ありません。
電源ボタンを押してもなんの反応もないようならば、SSDや電源ユニットが故障している可能性が高くなります。
立ち上がったとしても、起動までにやたらと時間がかかったりする場合はSSDの故障の前兆症状かもしれませんので、ただちにバックアップを取るようにしてください。
処理の早さがメリットであるSSDですが、一つ一つの処理に異常なほど時間がかかるようになってきたら故障が近いサインかもしれません。
動作の重さだけでなく、フリーズまで頻発するようになればいよいよ末期と言えるでしょう。
起動時の異常と同様、こういった場合もすぐにバックアップを取ってください。
なお、SSDの問題ではなくシステムトラブルによって動作が遅くなっている場合もありますので、Windows Updateや初期化を行うことで動作が改善されることもあります。
【Windowsパソコンの初期化方法】手順や注意点をわかりやすく解説>>
こういった当たり前の作業が正常に行えないような場合は、SSD内に不良セルが増えたことによる論理障害が起こっていることが疑われます。
この段階ではまだ完全な故障ではありませんが、こういった症状が現れてしまうと故障は時間の問題ですのでご注意ください。
パソコンの使用中に、何の前触れもなく突然電源が落ちてしまうというのも、SSD故障前の代表的な症状です。
SSDが、求められている処理に耐えられなくなったことで発生しやすい症状なので、特に重い作業をしているわけでもないのに不意に電源が落ちるようになってしまったら故障が近いサインとなります。
SSDを制御する「ファームウェア」というソフトウェアに障害が発生することによって、実際の容量よりも少なく表示されてしまうことがあります。
実際は256GBの容量があるはずなのに、数MBしかないと表示されてしまうようなパターンです。
「フリーズ」・「ブルースクリーン」・「動作が思い」など、パソコンにおける多くの不具合は、それぞれ単体で見た場合にはどこに問題があるのかを特定することが困難なのですが、容量表示の不具合はSSDが故障した際の特有の症状となります。
SSDの故障が疑われる場合、どのような対処法を取ればよいのでしょうか?
ここでは、SSDが故障してしまった時に自力で行うことができる復旧方法について紹介していきます。
パソコンの初期化を行うことで、論理障害が解消する場合があります。
初期化とは、パソコンを工場出荷時の状態に戻すことです。
すべてのデータやファイルを一旦削除してからOSを再インストールする形となりますので、初期化前にはデータのバックアップを取っておくことを忘れないようにしてください。
なお、初期化には非常に時間がかかりますし、電力消費も激しいことから、SSDの状態を悪化させてしまうリスクもあります。
初期化を試す場合は、「もう初期化以外に方法はない」という時のみにした方がよいです。
【Windowsパソコンの初期化方法】手順や注意点をわかりやすく解説>>
SSDを復旧させるためのフリーソフトも、Web上でいくつか公開されていますので、こういったソフトを活用するという手段もあります。
しかし、あくまでフリーソフトであるため質にばらつきがあり、使用したところで完全に直るという保証はない上、場合によっては症状が悪化してしまうこともあるので要注意です。
復旧ソフトを使うというのは選択肢の一つではありますが、「長年使用したSSDだし、すでにバックアップも取ったので、失敗しても構わない」という状況でもない限り、安易な使用は避けた方がよいかもしれません。
最も現実的な方法が、SSDの交換です。
真っ新なSSDに換えるわけですから、交換作業に失敗しない限りは間違いなく復旧します。
しかし、以下のような問題点もあります。
HDDに比べ、SSDは値段が高めです。
相場としては、数千円~2万円程度で収まることが多いですが、それでも一定の費用がかかってしまうのはデメリットの一つでしょう。
パソコンに詳しい方ならば別ですが、あまり詳しくない方がパソコンを分解してSSDの交換作業を行うと、取り付け方を間違ったり、交換作業中に他のパーツに物理的なダメージを与えてしまうということも考えられます。
SSDだけが新品になっても、他の重要パーツが劣化していれば、SSD交換後すぐに違った不具合が発生してしまうこともあります。
そもそもSSDに不具合が発生するということは、「パソコン自体の経年劣化」や「使用環境が劣悪だった」という可能性が疑われます。
どちらの場合でも、ダメージを受けるのはSSDだけでなく、マザーボードやメモリ、グラフィックボード、電源ユニットといった重要パーツも同じくダメージを受けている可能性が高くなります。
従って、せっかくSSDを交換しても、すぐに違うパーツが故障してパソコンが動かなくなってしまうというケースも想定されます。
SSDが故障したかもしれない時に、ついやってしまいがちなのが「再起動を繰り返す」という行為です。
確かに、再起動することで解消する不具合は多いですが、一度再起動を試してみて症状が改善しないようならば、それ以上繰り返しても無駄なことがほとんどです。
それどころか、無理な電力消費が影響してしまい、より深刻なダメージをSSDに与えてしまうこともあります。
SSDはただでさえ構造が複雑であり、いざ不具合が発生してしまうと、HDDに比べてデータの取り出しが困難になってしまいます。
状態を悪化させないためにも、初期化や復旧ソフトで直らなかった場合は、一旦電源を切って通電していない状態にしましょう。
通電しなければ、改善することもない分、悪化することもありません。
その上で、どうしても取り出したいデータがあるのならば、下手に自分で対処しようとせず専門業者に任せるのが無難でしょう。
SSDはHDDよりも構造が複雑であるため、完全に故障してしまうと、個人で対応することはまず不可能です。
専門業者に任せたとしても、SSDの復旧やデータの取り出しは確実ではありません。
そうした事態に備え、日々こまめにバックアップを取っておき、大事なデータを失わないようにしておくことが重要です。
監修者/前田 知伸
富士通を経て、リブート㈱代表取締役。パソコンリサイクル業15年目。国内外のIT資格を保有。NHKなど出演実績有り。